病院外で発症した肺炎を市中肺炎(community-acquired pneumonia:CAP)と言う。原因として,肺炎球菌などの細菌が最も多く,次に肺炎マイコプラズマ,そしてウイルス性がある。
急性発症の咳,痰などの気道症状に発熱を伴う場合に肺炎を疑い,胸部X線画像検査で肺野の浸潤影を確認して診断する。痰の性状も重要で,透明であることはなく黄緑,褐色調である場合が多い。臭いが伴う場合もある。通常は38℃以上の発熱を伴う。ただし,高齢者のCAPは誤嚥性肺炎を含むので,微熱のこともある1)。
検査が可能な施設であれば喀痰検査を行い,原因菌を精査する。尿中抗原検査,血液検査を行い,原因特異的な治療を開始する。入院か外来治療かはA-DROPスコアを参考とするが,当院では血液検査でWBC 2万/μL以上,CRP 20mg/dL以上の重症肺炎かどうかを基準としている。ほかに,全身状態が悪い,食事がまったく摂れない,重篤な基礎疾患がある,なども入院加療となる。喀痰検査をしても当初はエンピリック治療にならざるをえないため,入院の場合はβラクタマーゼに安定化されたペニシリン系抗菌薬投与を原則とする。
胸部X線画像検査はできるが血液検査ができない場合,両側性で多葉性の場合は予後不良となるため,専門機関へ紹介する。専門機関に紹介できないときは,セフトリアキソンナトリウム水和物(CTRX)2gを1時間で点滴静注後,ニューキノロン系抗菌薬の内服加療とし,翌日も受診を促す。肺炎像の悪化がなければ治療継続とする。悪化している場合,初期治療が奏効しない可能性を考慮して,高次医療機関への紹介を試みる。
血液検査のみで画像検査ができない場合は,腹部所見やCVA(脳血管障害),副鼻腔炎や扁桃膿瘍などがなく,喀痰があり痰の性状が感染様であれば,聴診所見で肺野の左右差を確認した上で,抗菌薬投与を開始する。基礎疾患のない患者ではサワシリンⓇ(アモキシシリン水和物)とオーグメンチンⓇ(アモキシシリン水和物・クラブラン酸カリウム)を併用する。糖尿病,慢性呼吸器疾患の基礎疾患があれば,ニューキノロン系抗菌薬を第一選択とする。高齢者で外来の誤嚥性肺炎の場合も,まずはユナシンⓇ(スルタミシリントシル酸塩水和物)で治療し,その後,ニューキノロン系抗菌薬を選択としている。
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