外ヘルニアという言葉の定義に明確な見解はなく,日常診療で使用されることは少ないが,内ヘルニアに呼応する用語として重要であり,腹壁の欠損部に囊(腹膜)が突出するものとされる。鼠径,大腿,腹壁(臍,白線,Spigelian,腰,腹壁瘢痕),傍ストーマ,骨盤壁(閉鎖孔,膀胱上窩,坐骨,会陰)ヘルニアなどに分類される。このうち,鼠径ヘルニアが最も罹患率が高く,80〜90%を占める。本稿では診療で遭遇しやすい鼠径ヘルニア,腹壁瘢痕ヘルニアを中心に論を展開する。
鼠径ヘルニア発生の危険因子としては,高齢,るい瘦,経後恥骨的前立腺全摘術既往などが報告されているが,明確な予防法はない。腹壁瘢痕ヘルニアは開腹手術後に0.5〜11%で発生する合併症である。
鼠径ヘルニア,腹壁瘢痕ヘルニアともに診断は身体所見が重要であり,診断率は70〜90%とされる。典型的には立位や腹圧上昇時に患部の膨隆を呈する。身体所見が非典型的な症例には,超音波,CT,MRI,ヘルニオグラフィーなどの診断手段を用いる。筆者らはCT撮影時に腹臥位,腹圧をかけた状態で撮影をすることで,その正診率を上げる工夫をしている。
外ヘルニアに自然治癒はなく,根本治療である手術を行うか,経過観察するかである。基本的に嵌頓既往や症状を有する場合,手術適応と考える。経過観察を選択する際には,嵌頓リスクや,症状増悪の可能性を念頭に置く必要がある。また,ASA-PSⅢもしくはⅣに該当する場合,手術合併症の発生率が高くなることが報告されており,リスク/ベネフィットを勘案すべきである。
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