【質問者】山上 淳 東京女子医科大学皮膚科准教授
【アカデミア主導の治験や臨床試験による治療エビデンスの創出を!】
乳房外パジェット病は主に高齢者の外陰部,肛囲,腋窩などに好発する皮膚癌で,リンパ節や臓器転移をきたしうる悪性腫瘍です。転移症例に対する治療は化学療法となりますが,その疾患希少性ゆえに治療開発が非常に遅れています。一方,近年分子標的治療や内分泌療法といった個別化治療への期待が高まりつつあり,今回はこれについて概説します。
本疾患は腺癌に分類されますが,免疫組織化学的プロファイルにおいて腺癌の中でも特に乳癌や唾液腺癌との類似点が多いことが知られています。その1つが腫瘍細胞におけるhuman epidermal growth factor receptor 2(HER2)蛋白の強発現で,転移症例における解析では約30%にHER2遺伝子の増幅が確認されています1)。
これをもとに私たちの施設では,HER2陽性転移例を対象とした抗HER2ヒト化モノクローナル抗体であるトラスツズマブ(TRA)とドセタキセル併用療法の単群,第2相臨床試験(先進医療)を実施しました。全13例の評価において,主要評価項目である3サイクル後の奏効率は76.9%(n=10/13;90%CI:50.5~93.4%,完全奏効,部分奏効は各々5例)で,奏効率の信頼下限が閾値(35%)を上回り,本併用療法の有効性が示されました2)。本試験は進行期症例に対する化学療法の初の前向き介入研究であり,この結果により,HER2陽性例の治療開発の展望を開くことができました。
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