家族性高コレステロール血症(familial hypercholesterolemia:FH)は,low-density lipoprotein(LDL)受容体およびその関連遺伝子の変異によって生じる。ヘテロ接合体(FHヘテロ)によるものは,200~500人に1人と高頻度であり,常染色体優性遺伝形式をとる遺伝性疾患である。無治療の場合,小児期より粥状動脈硬化が進行するため,早期発見,早期介入を必要とする。一方,ホモ接合体(FHホモ)は,100万人に1人と希少であり,常染色体劣性遺伝形式をとる。より重症で,乳児期より動脈硬化が開始することもあるため,治療の考え方はFHヘテロとは大きく異なる。
通常,小児期は無症状のことが多い。偶発的に発見される高LDL-C血症や家族歴(両親,祖父母および兄弟姉妹などの高LDL-C血症や早発性冠動脈疾患などの既往)が診断の契機となる場合が多い。
診断は,続発性脂質異常症(ネフローゼ,甲状腺機能低下症,肥満,糖尿病など)が否定され,①未治療時のLDL-C≧140mg/dL,②2親等以内のFHの家族歴(早発性冠動脈疾患などの既往等を含む),の2項目を満たす場合である。
小児期にはLDL-C値が変動するため,疑った場合,複数回のLDL-C値を測定する。
FHと診断された場合は必ず家族調査を行い,FH患児・患者の診断につなげる(カスケード・スクリーニングの概念)。
小児期に黄色腫を認める場合,LDL-Cは著明高値の可能性が高い。この場合,FHホモや他の脂質代謝異常疾患(例:シトステロール血症,脳腱黄色腫)を疑う。
小児期より皮膚黄色腫,腱黄色腫を認め,LDL-C値はFHヘテロと比べ著明高値をとる。通常,両親がいずれもFHヘテロである。
原則,日本小児科学会・日本動脈硬化学会合同小児家族性高コレステロール血症診療ガイド作成ワーキンググループによる「小児家族性高コレステロール血症診療ガイド2017」を参考にする。
早期から生活習慣の指導を行い,LDL-C値低下を図る。同時に,頸動脈超音波検査での肥厚やプラークの存在,単純X線によるアキレス腱肥厚の有無を定期的にモニタリングする。
LDL-C値の管理目標は140mg/dL以下であり,180mg/dLを超える場合,次の治療ステップを考慮する。
生活習慣の改善による効果が十分でない場合には,10歳を目安に薬物療法開始を考慮する。
薬物療法による反応性を見きわめ,不十分な場合には速やかにLDLアフェレシスを開始する。
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