原発性心臓腫瘍には,粘液腫に代表される良性腫瘍と肉腫に代表される悪性腫瘍がある。頻度的には良性腫瘍がほとんどである。良性腫瘍は完全切除後の再発率は非常に低く,適切な外科治療が行われれば予後は良好である。一方,悪性腫瘍は完全切除が困難な場合も多く,予後は不良である。
症状としては腫瘍の部位によるが,僧帽弁狭窄症や三尖弁狭窄症に類似した症状,すなわち低心拍出によるめまい,失神,息切れ,呼吸困難などがあり,また腫瘍ないしは腫瘍に付着した血栓の飛散による塞栓症,あるいは多彩な不定愁訴を訴えることもある。しかし,固有の症状がなく心エコーで偶発的に発見されることが最も多い。
最も頻度が高い粘液腫は約8割が左房内に,約2割が右房内に発生するが,房室弁に発生する場合も稀ではあるが存在する。多彩な形態をとりうるが,心房内に発生する周囲組織への浸潤を認めない表面が比較的平滑な腫瘍は,粘液腫を強く疑わせる所見である。次に頻度が高い乳頭状線維弾性腫は,心臓弁に付着することがほとんどであり,エコー検査では感染性心内膜炎における疣贅との鑑別が困難な場合が多い。最近診断頻度が高くなってきている石灰化アモルファス腫瘍は,透析患者の僧帽弁輪に発生することが多く,表面平滑な石灰化を伴う充実性腫瘤として描出される。心室の心筋内に発生する良性腫瘍に線維腫や脂肪腫などがあり,画像診断で表面平滑な像を呈するのが特徴である。悪性腫瘍はあらゆる部位に発生しうるが,CTやMRIにおける周囲組織への浸潤像は悪性腫瘍を疑う重要な所見である。
心臓腫瘍は塞栓症の原因になるため,1cm以下で可動性がない場合を除いて,原則的には診断がついた時点で手術適応としている。手術しない場合は3~6カ月ごとの頻回な心エコー検査を行い,増大傾向がみられれば速やかに手術を行う。
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