癒着胎盤は,絨毛が子宮筋層に直接付着もしくは侵入し,胎盤の一部または全部が子宮筋層と強固に癒着し剝離困難な状態である。頻度は0.1~0.2%であるが,前置胎盤合併で5%,帝王切開既往のある前置胎盤では24%,2回以上では47%に上昇すると報告されている。癒着胎盤は絨毛の侵入程度により付着胎盤,嵌入胎盤,穿通胎盤にわけられる。術前の画像診断(子宮前壁では超音波検査,後壁ではMRI)である程度診断可能であるが,確実に全例を診断しておくことは困難である。
子宮内反症は,子宮底部が陥没または下垂して子宮内膜が外方に反転し,子宮内膜面が腟内または外陰に露出した状態である。頻度は0.02~0.05%で,その多くは児娩出直後に発生し,巨大児,分娩進行異常,胎盤娩出の際の不適切な処置などが原因として挙げられるが,リスク因子がなくても発症する。
癒着胎盤の分娩前診断は,既往帝王切開,母体高年齢,体外受精後妊娠,子宮手術既往,前置胎盤などのリスク因子をふまえ,超音波検査やMRI検査を行う。正確な診断は難しい場合がある。分娩後は,胎盤剝離の状態により判断される。正確な診断は,摘出子宮での組織学的評価である。
子宮内反症は,完全内反例では出血性腫瘤の突出,出血,下腹部痛,ショック状態などで判断できるが,不全内反例では明確ではないことがある。内診では子宮底部の陥凹を触知するか不明瞭であり,内診指で腫瘤を触知する。超音波検査では子宮底部の陥凹,反転した所見を認める。
前置癒着胎盤が疑われる場合,高次施設での分娩が望ましい。癒着の程度,場所により,自己血採取,輸血準備,尿管ステント挿入,膀胱浸潤が疑われるときは泌尿器科医の応援,血管用バルーンカテーテル挿入や動脈塞栓の可能性のあるときは,放射線科医の応援が必要である。状況に応じて,産科医に加えて,麻酔科医,泌尿器科医,放射線科医の合同カンファレンスでの情報共有が大切である。常位癒着胎盤では,出血が続けば大量出血に備えながら用手剝離を行う。出血がなければ待機も1つの方法である。
子宮内反症では,不全内反の場合,発症時に整復を試みることもあるが,基本的には全身麻酔下で鎮静,鎮痛,子宮弛緩の状態で整復を行う。
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