心房細動(atrial fibrillation:AF)例に対する抗凝固療法の施行率は経年的に上昇しているが、それでも年間1.6%が脳卒中・全身性塞栓症を来す[Fushimi AFレジストリ]。抗凝固療法だけではAF例の脳梗塞抑制には不十分である可能性がある。事実、AF例脳梗塞に占める心原性塞栓症の割合は52%にすぎないとの観察データもある。
このようにAF例脳梗塞の約半数を占める可能性のある非心原性梗塞、その抑制にはスタチンが有用である可能性が大規模観察研究から示唆された。カナダ・トロント大学のBisan Shweikialrefaee氏らによるJournal of the American Heart Association誌6月15日付掲載論文を紹介したい。
同氏らが解析対象としたのは、何らかの理由で入院中にAFと新規診断された66歳以上の26万1659例である。弁膜症例は除外されている。カナダ公的保険データベースから抽出した。
これらを入院前からのスタチン服用の有無で2群に分け、その後の脳卒中入院率を比較した(スタチン服用は54.6%)。
全体の平均年齢は78歳、女性が48.8%を占めた。抗凝固薬は32.7%が服薬していた。
そこで1年間の脳卒中入院発生率を比較すると、スタチン服用群では1.2%となり、非服用群の1.5%に比べ有意に低くなっていた(P<0.001)。なお脳出血は両群とも0.2%で差はない。
またCHA2DS2-VAScスコア構成因子と抗血栓療法で補正後も、スタチン服用群における脳卒中入院ハザード比(HR)は0.83の有意低値だった(95%信頼区間[CI]:0.77-0.88)。
さらに脂質代謝による補正を加えても同様に、HRは0.87(0.7-0.97)と有意に低かった。
スタチン群におけるリスク抑制は、LDL-Cの高低を問わず一貫していた。
Shweikialrefaee氏らによれば本研究は、脳卒中1次予防を含むAF集団でスタチンによる脳卒中抑制作用を報告する初の研究だという(68.4%は脳卒中既往なし)。
その上で同氏らはスタチンに伴う脳卒中リスク減少率が(ほぼすべて)1次予防例を対象としたスタチン有効性試験メタ解析(HR:0.84)と近似していた点に触れ、今回認められた脳卒中リスク減少は血管系リスク因子への介入によりもたらされたのでは、と考察している。
本研究は政府系機関からの資金提供を受けて実施された。