卵円孔は胎児循環に必須の心内構造であるが,出生後数日~数カ月以内に機能的に閉鎖する。しかし,卵円孔周囲の一次中隔と二次中隔が完全に癒合しない場合,フラップ状の一方向弁の形態となり,右房圧が左房圧を超えた場合に右左短絡を生じるようになる。このような状態を卵円孔開存(patent foramen ovale:PFO)と呼び,一般健常成人の約15~20%に認めると報告されている。
2019年より,卵円孔開存が原因と考えられる潜因性脳梗塞の再発予防のために,経皮的卵円孔開存閉鎖術が導入されている。現在,日本脳卒中学会等3学会の認定を受けた施設でカテーテル閉鎖術が可能である1)。
奇異性脳塞栓が疑われた患者に対しPFOの検出を行う場合,経胸壁心エコー,経頭蓋ドプラー法,経食道心エコーによるコントラストエコー評価が重要である。心房中隔瘤を伴い,安静時からカラードプラー法で右左もしくは左右短絡が確認されるような大きなPFOの診断は比較的容易だが,多くのPFO短絡は安静時に確認されることは稀であり,必ず十分なバルサルバ負荷をかけて検査する必要がある2)。
鎮静をかけた経食道心エコーでは,バルサルバ負荷が十分にかからず,PFO短絡を的確に検出することができないため,十分なバルサルバ負荷を用いた経胸壁心エコーによるバブルスタディーが最も感度が高い。なお,バルサルバ負荷の弱い患者では,エコー実施者が被験者の上腹部を用手的に圧迫し,その圧迫に逆らうような腹圧をかけてもらうことで十分なバルサルバ負荷がかかるようになり,検出率が向上する。
バブルスタディーの評価基準は,右心房にコントラストが充満した場合,もしくはバルサルバ手技解除後3心拍以内に左房内にコントラストを認めた場合に,陽性と判断する。左心系に検出されるバブル量により,Grade 1(左心系バブル5個以下),Grade 2(6~19個),Grade 3(20個以上),Grade 4(心腔全体の描出),に分類される。Grade 2以上の場合はPFOが存在する可能性が高い。
バブルスタディーによってPFOの存在が疑われる場合には,経食道心エコーによる形態評価を行い,PFOのリスク評価を行う。形態評価では,①長いトンネル長を有する(≧10mm),②心房中隔瘤もしくは高振幅中隔(hypermobile),③右房内組織(eustachian valve,Chiari network),④下大静脈(inferior vena cava:IVC)が直接PFOに吹き込むlow angle PFO,⑤バブルスタディーでGrade 3以上の短絡,これら5項目中2項目以上を有するPFOはハイリスクPFOと評価し,経皮的卵円孔開存閉鎖術が強く推奨される。
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