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熱傷[私の治療]

No.5177 (2023年07月15日発行) P.44

田熊清継 (川崎市立川崎病院救命救急センター所長)

登録日: 2023-07-18

最終更新日: 2023-07-11

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  • 「熱傷」は,熱傷面積・深度(図,表1),年齢,気道熱傷(=気道損傷)の有無により重症度が診断可能で,それに準じた共通の病態,臨床経過をとる。したがって,重症度に応じた臨床経過に関連した治療介入のポイントをおさえて治療することで,予後の向上が可能である。


    ▶病歴聴取のポイント

    通常の病歴聴取に加え,詳細な受傷機転,体重,既往歴を把握する。受傷機転として,閉鎖空間での受傷は気道熱傷や一酸化炭素(CO)中毒やシアン中毒を疑う重要な情報となる。また,時に電撃傷や化学損傷の関与のkeyとなる。受傷前の体重は,20%TBSA(total body surface area)以上の熱傷では輸液量の指標となる。既往歴では,糖尿病や肝硬変,がん,免疫疾患,ステロイド使用の有無は,感染対策の判断に影響する。なお,小児では熱傷受傷以前に下痢などで脱水がある場合,10%TBSA程度の熱傷でも急性腎不全を起こすことがあるため,確認する。

    ▶バイタルサイン・身体診察のポイント

    外傷の初期診療同様,ABCDアプローチを行う。創面を汚染させないよう,現場から可能な限り標準予防策に準じて滅菌あるいはディスポ手袋を使う。爆発に伴う熱傷では頸椎保護が必要になる。初期の熱傷では,通常,重症でも意識は保たれる。意識障害ではCO中毒などのほか,内因性病態を考慮する。重症度は「Artzの基準」(表2)を参考にする。Ⅱ度15%TBSA以上および/またはⅢ度2%TBSA以上(小児・高齢者では10%TBSA以上)では,輸液が必要である。Ⅰ度熱傷は表皮損傷であり,熱傷範囲に含めないが,全身の日焼けでは脱水状態を評価する。


    【重症度の指標】

    〈Artzの基準〉

    重症度を算定し,専門施設,一般病院,通院の判断の参考に使う。年齢や併存疾患が考慮されていないので注意する。

    〈熱傷指数(burn index:BI)〉

    「Ⅲ度熱傷面積(%)+Ⅱ度熱傷面積(%)/2」で表す。死亡率と相関し,10~15以上は重症熱傷とする。

    〈熱傷予後指数(prognostic burn index:PBI)〉

    「BI+年齢」で予後を評価する。PBI 100以上が重篤で,救命率が低い。PBIに気道熱傷,合併損傷,既往歴などを考慮し,重症度を総合的に評価する。

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