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完全房室ブロック[私の治療]

No.5177 (2023年07月15日発行) P.49

草野研吾 (国立循環器病研究センター心臓血管内科部門長・副院長)

登録日: 2023-07-15

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  • 完全房室ブロックは,心房から心室への伝導が永続的に途絶するものである。様々な心疾患に付随して生じるため,基礎心疾患の除外が重要である。特にサルコイドーシスの初期症状として,完全房室ブロックが生じることがあるため,鑑別が重要である。治療としてはペースメーカー治療が確立しているが,先天性の場合は運動による心拍数上昇が得られるため,ペースメーカーが適応にならないことが多い。

    ▶診断のポイント

    【症状】

    房室ブロックの症状は,失神,全身倦怠感,息切れである。失神は,発作性房室ブロックまたはQT延長を伴う多形性心室頻拍(torsade de pointes)によることが多い。完全房室ブロックでは,著しい徐脈による全身倦怠感,息切れが主な症状である。

    【検査所見】

    心房から心室への興奮の伝導が完全に途絶して,P波とQRS波は互いに独立した周期で出現する。心室興奮は接合部,またはPurkinje線維から発生する補充調律である。完全房室ブロックで注意すべきことは,徐脈に伴うtorsade de pointesの出現である。原因として,約半数が加齢に伴う特発性とされているが,各種心疾患(心筋症,慢性虚血性心疾患,石灰化弁,高血圧,サルコイドーシス,ヘモジデローシス,アミロイドーシスなど)や開心術後に起こる場合があるので,各種画像検査による心疾患の除外が重要である。特にサルコイドーシスでは,心エコーで大きな異常が認められない初期に完全房室ブロックが生じることがある。したがって,若年,特に女性の完全房室ブロックでは,心臓サルコイドーシスの除外を積極的に行う必要がある。

    機能的な房室伝導の低下(運動選手など)の場合は運動やアトロピン負荷によって伝導能が改善するが,His束以下の伝導障害の場合は,洞調律の頻度が増すほど伝導障害が生じやすいため,運動負荷で房室ブロックが起こることがある。そのため,症例に応じて運動負荷を施行する。

    また,ラミノパチーやSCN5A遺伝子の異常で家族性房室ブロックが生じることが報告されているので,遺伝子検査の必要性を検討する上で家族歴の聴取も重要である。

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