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薬用植物の国内栽培の現実味や課題について

No.5188 (2023年09月30日発行) P.64

吉野鉄大 (慶應義塾大学医学部全人的漢方診断 共同研究講座特任講師)

有田龍太郎 (東北大学病院総合地域医療教育支援部・ 漢方内科)

登録日: 2023-09-29

最終更新日: 2023-09-26

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  • 漢方薬の原料となる生薬は薬用植物などから作成されますが,主な調達先である中国の人件費の高騰や円安など様々な要因により,国内栽培の機運が高まってきていると伺います。とはいえ,日本の狭い国土で薬用植物栽培を行うというのはどのくらい現実的なのでしょうか。薬用植物の国内栽培の現実味や課題について,東北大学・有田龍太郎先生にご解説をお願いします。

    【質問者】吉野鉄大 慶應義塾大学医学部全人的漢方診断 共同研究講座特任講師


    【回答】

    【国内栽培推進のカギは技術革新,適切な薬価設定と販路拡大にある】

    漢方薬の生産金額は,この10年で1.5倍の2100億円(2020年)に増加しており,使用も拡大しています。新型コロナウイルス感染症のパンデミックで漢方薬の需要が増大し,出荷制限となったことも記憶に新しいと思います。

    漢方薬の原料である生薬は,主に植物の一部を加工して使われ,薬でありながらその起源は天然物です。江戸中期〜昭和前半にかけて薬用植物は国内で栽培され,その品質の高さから輸出もされていました。1970年代後半以降,海外から安価な生薬が輸入されると,生薬の価格にあたる公定薬価も下げられ,国内栽培は価格競争に敗れ激減しました。現在は生薬の8割を中国からの輸入に頼るまでになり,国産はわずか1割にとどまっています。ところが近年,中国の経済発展の影響で生薬輸入価格が上昇し,さらに物価上昇,円安など悪条件が重なり,原材料費が高騰しています。一方で,薬価はほとんど据え置きです。その結果,生薬を売っても薄利どころか赤字になる非常事態にあります。

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