桂枝茯苓丸加薏苡仁は,乳がんのホルモン療法による副作用である更年期障害に対して有効な漢方薬として注目されています1)。
乳がん治療におけるホルモン療法,特に抗エストロゲン薬であるタモキシフェンやアロマターゼ阻害剤は,治療中の患者に更年期障害様の副作用を引き起こすことがよくあります。これらの副作用には,ホットフラッシュ,発汗,冷え,不眠,肩こり,関節痛,精神的不安定などが含まれます。桂枝茯苓丸加薏苡仁は,こうした症状の緩和に効果的な治療法として利用されています。
乳がんの内分泌療法による副作用である更年期障害に対して有効な漢方薬としては当帰芍薬散,加味逍遙散,桂枝茯苓丸もよく使われます(表)。ただ,これらは効果が限定的なことも少なくありません。
その点,桂枝茯苓丸加薏苡仁は桂枝茯苓丸よりも桂皮も茯苓も多く含有され(桂枝茯苓丸:桂皮3.0g,茯苓:3.0g,桂枝茯苓丸加薏苡仁:桂皮4.0g,茯苓4.0g),そのため効果も早く出現することが多く,また,血の流れをよくし肌を潤す作用がある薏苡仁のおかげで更年期障害によって起こる肌の乾燥を防ぎます。
さらには肌荒れやむくみに対する効果もあるため,桂枝茯苓丸を選択するよりも桂枝茯苓丸加薏苡仁を選択する方が理にかなっていると考え,私は好んで使用しています。
桂枝茯苓丸加薏苡仁は,更年期障害の症状緩和の効果はある程度でも肌のトラブルが改善され美肌になることを患者さんが実感できるため長期に使用されることも多く,結局は更年期障害の症状緩和にも寄与していると考えます。