卒前・卒後の漢方医学教育のあり方を巡って総合診療と漢方診療の専門家が意見交換するパネルディスカッションが2月10日、都内で開催された漢方医学教育SYMPOSIUM(主催:日本漢方医学教育振興財団)で行われた。この中で順天堂大総合診療科学講座主任教授の内藤俊夫氏は「LINEによる漢方教育」を実践していることを紹介し、総合診療・漢方診療の教育におけるDX(デジタル・トランスフォーメーション)推進を重要なポイントとして挙げた。
内藤氏は「今の若者はFacebookも見ないが、LINEなら毎日開く」と述べ、DXのツールとしてLINEを選んだ理由を説明。
LINEを用いて1日1問の問題を発信するシステムには現在全国の医学部生など約2000人が参加。内藤氏は、このシステムでは問題の分野や対象者の属性ごとに正答率データが集計され、学習効果や知識不十分な分野の解析も可能だとし、有効性の検証を進めていく考えを示した。
内藤氏は、2018年からスタートした専門医制度で基本領域に位置づけられた総合診療では、どのような漢方教育を行うかが重要な課題になっていると指摘。順天堂大総合診療科のCOVID-19後遺症外来では患者の治療に漢方薬を積極的に活用し、この外来が研修医や専攻医の漢方教育の場にもなっていると報告した。
フロアを交えた討論の中でも内藤氏は、COVID-19やインフルエンザの診療で総合診療医が漢方薬という選択肢を持つことのメリットを強調。
「例えばインフルエンザで(発症から)3日経ったけれど、倦怠感がある、あるいは咳が続いているというときに、タミフルは使えないが、漢方薬なら選択肢がたくさんありますよという話ができ、研修医はそこでびっくりする。COVID-19でも2週間咳が続くという人にCOVID-19治療薬は使えないけれど漢方薬は活躍できる。それを(研修医に)見せることが必要」と述べ、西洋医学に東洋医学を融合させた教育の実践が重要との認識を示した。
パネルディスカッションではこのほか、飯塚病院漢方診療科診療部長の吉永亮氏が「漢方は医療資源の限られた地域医療の現場でニーズが高い」と指摘し、能登半島地震の被災地の病院でも冷えに関連した症状などで漢方が活用されていることを報告した。
漢方医学教育SYMPOSIUMのパネルディスカッションなどの模様は、日本漢方医学教育振興財団のサイトよりオンデマンドで視聴できる(配信は4月30日まで)。
【関連情報】
漢方医学教育SYMPOSIUM2024「オンデマンド視聴」のご案内(日本漢方医学教育振興財団)