【質問者】飯塚徳男 山口総合健診センター所長
【病の語りを聴いて,女性の三大処方+αで心身への信頼感を取り戻してもらう】
更年期は,社会的役割や人間関係の変化(子どもや夫婦の問題,親の介護,職場での行き詰まりなど)が起こる時期です。また,妊孕性,若さ,家族や友人,仕事,健康などを喪う時期でもあり,これまでがんばってきた自分への信頼感が損なわれることが多く,卵巣機能の揺らぎからくるストレス耐性の低下もあり,真面目な人ほど心身の不調を感じやすい時期です。
ほてり,汗,不眠,イライラ,不安,疲労感,肩こり,冷え,関節痛……愁訴の多い更年期症候群にこそ,漢方の考え方,漢方薬のよさが活きてきます。訴えが多岐にわたろうとも,それは「証」を考える上での重要な症候であり,「不定愁訴」という考え方は漢方にはありません。時間的脈絡を中心に据えて,患者の体験としての経過を家族の歴史なども含め,丁寧に聴くことを心掛けると,「病の語り」としてそのストーリーが理解でき,「面倒な患者さん」でなく,「なんとかよくして差し上げたい患者さん」になります。
自験例では,3カ月間103名の更年期女性に,漢方薬を78名(75.7%)で処方,34名(33.0%)では漢方薬のみでした。最も処方していたのは「加味逍遙散」で,「半夏厚朴湯」「桂枝茯苓丸(加ヨクイニン)」「補中益気湯」「柴胡桂枝乾姜湯」「柴胡加竜骨牡蛎湯」「抑肝散(加陳皮半夏)」「温経湯」「八味地黄丸」と続いていました。漢方薬は複数の生薬で構成される多成分系であり,1つの方剤で多くの症状が改善することが多く(異病同治),また同じ症状でも,その人の体質・気質や対処法の違いによって異なった方剤が効果的です(同病異治)。
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