GIP/GLP-1デュアルアゴニストであるチルゼパチドはGLP-1受容体アゴニストを上回る減量作用が、正常体重を超える2型糖尿病を対象とした大規模ランダム化試験(RCT)"SURPASS-2"で示されているが、懸念されるのは体組成への悪影響(筋肉量減少)である。10月2日からドイツ・ハンブルクで開催された欧州糖尿病学会(EASD)第59回学術集会ではRCTサブスタディの結果として、52週間のチルゼパチド使用により除脂肪筋肉量が減少する可能性が示された。スウェーデン・リンシェーピング大学のJennifer Linge氏が報告した。
今回解析対象となったSURPASS-3 MRIスタディの参加者は、「BMI 25~45kg/m2で直近3カ月の体重が安定」し、かつ脂肪肝を認める血糖管理不良の2型糖尿病296例である。
平均年齢は56.2歳、HbA1c平均値は8.2%、平均体重は94.4kg、BMI平均は33.5kg/m2だった。
これら296例はチルゼパチド5、10、15mg群、あるいはインスリン・デグルデク群にランダム化され、52週間観察された(非盲検)。基礎治療として全例がメトホルミンを服用し、SGLT2阻害薬併用も可能だった。
その上で全例、試験開始前と開始52週間後にMRIを用いて大腿部の「除脂肪筋肉量」を定量化、同時に「筋肉内脂肪浸潤」の割合も測定した。MRIを用いた除脂肪筋肉量測定は、DXAによる筋肉量推算よりもより正確とされる。
・体重
血糖降下薬開始52週間後、体重は既報の通り、デグルデク群に比べチルゼパチド群で用量依存性に7.8~11.2kg、有意に減少した。
・筋肉への影響
「除脂肪筋肉量」は、デグルデク群で52週間に0.16L増加したのに対し、チルゼパチド群では用量依存性に0.44~0.76Lの減少を認めた(検定結果の提示なし)。
一方「筋肉内脂肪浸潤」率は、デグルデク群で0.03%上昇していたのに対し、チルゼパチド群では用量依存性に0.23~0.44%低下していた(検定なし)。
これらの結果からLinge氏が導いた結論は、「チルゼパチドは筋組成に明らかな悪影響を及ぼすことなく、体重と脂肪を改善する」だった。
SURPASS-3 MRI試験はEli Lilly and Companyからの資金提供を受けて実施された。またLinge氏は今回用いられたMRIモダリティを扱うAMRA Medicalの従業員でもある。