株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

■NEWS 【欧州糖尿病学会(EASD)】閉経前女性のHbA1c正常上限は引き下げが必要?―英国大規模観察研究

登録日: 2023-10-16

最終更新日: 2023-10-17

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

現在、HbA1c正常値上限は「6.5%」が一般的だが、若年女性に限っては少し引き下げるべきではなかろうか―。このように結論する観察研究が、欧州糖尿病学会(EASD)第59回学術集会で報告された(1026日、於ハンブルク[ドイツ])。背景にあるのは、2型糖尿病(DM)を合併する女性は、死亡相対リスク上昇幅が男性よりも有意に大きいという事実である[Lancet. 2018]。この理由として報告者である英国・RES ConsortiumMichael Stedman氏らは、女性の若年時のDMが見逃され、血糖管理が不十分だった可能性を指摘している。

【対象と方法】

今回Stedman氏らが解析対象としたのは、英国の複数レジストリに201217年の間に登録された、HbA1c値「4.0<6.7%」だった健常者146907名である。

年齢中央値は48歳だった。

これらのHbA1c値を男女別に分け、年齢ごとに比較した。

【結果】

その結果、男女ともHbA1c値は年齢が上がるに従い上昇した。

ただし50歳に至るまでは一貫して、男性に比べて女性で著明低値を認めた。

すなわち「50歳未満」に限れば、女性の平均HbA1c値は男性よりも2.3%低く、同等の値を示す男性はおよそ10歳若かった。

一方「50歳以上」では、このようなHbA1cの著明な男女差を認めることはなかった。

また女性における「HbA1c6.5%」(DM)の割合は、「50歳未満」では男性の約5割のみ、「50歳以上」ならば約8割だった。

【考察】

Stedman氏らは、50歳未満女性でのみ特異的に男性と比較してHbA1c値低値が著明な理由として、「月経」(糖化ヘモグロビン入れ替え)の影響でHbA1c値が実際よりも低く出ている可能性を指摘した。

そのため50歳未満女性ではDM発症が見逃され、ひいては死亡リスクが増加しているのではないか―。このように推論した上でStedman氏らは、閉経前女性の至適HbA1c値を引き下げるべきではないかと問いかけた。

著者らに開示すべき利益相反はないとのことだ。また本研究に対する資金提供の有無は示されなかった。

本研究は報告と同時に、Diabetes Therapy誌ウェブサイトで公開された。

なお同様の観察研究はサウジアラビアからも報告されている[Alghamdi AS, et al. 2021]。

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

もっと見る

関連求人情報

関連物件情報

もっと見る

page top