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化膿性汗腺炎[私の治療]

No.5191 (2023年10月21日発行) P.57

乃村俊史 (筑波大学医学医療系皮膚科教授)

登録日: 2023-10-22

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  • 化膿性汗腺炎は,腋窩・鼠径部・臀部・乳房下部に好発する,毛包を主座とする炎症性疾患である。思春期頃に発症し,年余にわたり有痛性の炎症性結節や膿瘍を繰り返し,徐々に瘢痕や瘻孔を形成する。排膿や圧痛,熱感を認めるため,癤や癰,感染性表皮囊腫などの皮膚細菌感染症と誤診されることがあるが,本症は真の感染症ではなく,毛包の閉塞と自己炎症が発症に関与する。一部の症例では常染色体優性(顕性)遺伝を示すが,そのような家系ではγセクレターゼをコードする遺伝子群の一部(NCSTN,PSENEN,PSEN1)に機能喪失変異が同定されることがある。
    機械的刺激やニコチン,γセクレターゼ変異などにより毛包漏斗部が過角化により閉塞すると毛包が過剰なケラチンで充塡され,毛包内部で皮膚常在菌が増殖するが,それが破裂すると真皮内にケラチンや皮膚常在菌が放出され,NLRP3インフラマソーム経路を介して自然免疫が活性化し,強い自己炎症が惹起される。また,高度な炎症を繰り返すうちに組織のリモデリングが起こり,瘢痕や瘻孔が形成される。
    クローン病や潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患や,家族性地中海熱などの自己炎症性疾患を合併することがある。また,本症は皮膚有棘細胞癌の発生母地になることがある。

    ▶診断のポイント

    前述の好発部位の少なくとも1つに,炎症性結節や膿瘍を半年に2回以上繰り返す場合には本症が強く疑われる。細菌培養検査などにより感染症を否定し,診断を確定する。慢性化し病変が進行すると,瘢痕や瘻孔を伴うので,診断は容易である。

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