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大動脈解離[私の治療]

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  • 【治療上の一般的注意&禁忌】
    〈注意〉

    急性大動脈解離の死因として最も多い病態は心タンポナーデである。したがって,心エコー検査を必ず施行し心囊液貯留を確認した場合には,手術治療の準備を急ぐ必要がある。

    〈禁忌〉

    脳梗塞症状で発症した大動脈解離未診断の患者が,脳卒中専門病院に搬送され治療として脳血栓溶解治療が実施されることもある。その後に出血性脳梗塞をきたすとヘパリンを用いる人工心肺装置を使用できなくなり,大動脈解離に対する緊急手術治療を実施しえなくなるため,頸部血管エコー検査等で大動脈解離を除外しない限り脳血栓溶解療法は禁忌となる。

    ▶治療の実際

    【Stanford A型】

    緊急手術による上行大動脈または上行・弓部大動脈人工血管置換術を実施する。術式は,大動脈内膜裂孔(entry)の位置に応じて選択する。ただし,血栓閉塞型の場合には,Stanford A型であっても保存的治療が奏効することが多い。

    【Stanford B型】

    降圧,鎮痛,安静療法からなる保存的治療を行う。臓器虚血症状を伴った場合には,ステントグラフト内挿術によって大動脈内膜裂孔を閉鎖する胸部血管内大動脈修復治療を行う。

    〈薬物治療〉

    Stanford A型の緊急手術治療開始までの初期治療として,また,Stanford B型の保存的治療として厳重な降圧治療を図る。


    一手目 :ペルジピン注(ニカルジピン塩酸塩)1回10mg(10mL)に生理食塩水10mLを加えたものを末梢血管から1~20mL/時で持続静注,または同原液を中心静脈から0.5~ 20mL/時で持続静注

    二手目 :〈降圧が不十分な場合〉ミリスロール注(ニトログリセリン)1回5mg(10mL)を1~5mL/時で持続静注

    経口もしくは経管内服治療が可能となったら,以下へ変更する。


    一手目 :ノルバスク5mg錠(アムロジピンベシル酸塩)1回1錠1日1~2回(朝もしくは朝・夕食後),またはアダラート20mgCR錠(ニフェジピン)1回1錠1日3回(毎食後),最大80mg/日まで

    二手目 :〈降圧が不十分な場合〉アーチスト10mg錠(カルベジロール)1回1~2錠1日1回(朝)

    三手目 :〈降圧が不十分な場合〉アジルバ10mg錠(アジルサルタン)1回2~4錠1日1回(朝)

    四手目 :〈降圧が不十分な場合〉カルデナリン錠(ドキサゾシンメシル酸塩)1回1錠(0.5~4mg)1日2回(朝・夕食後),最大8mg/日まで

    最近では,上記の二手目(アーチスト)に先んじて,アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)のエンレスト100mg錠(サクビトリルバルサルタンナトリウム水和物)1回2~4錠1日1回の投与で,早期の降圧効果を得ている。

    齋木佳克(東北大学大学院医学系研究科外科病態学講座心臓血管外科学分野教授)

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