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肺非結核性抗酸菌症(肺NTM症)に対する漢方薬の有効性について

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  • 補中益気湯は補剤の代表格であり,Enomotoらはパイロット準ランダム化比較試験において,補中益気湯群では菌の陰性化は認めなかったものの,血清アルブミン値やBMIがコントロール群と比し有意に増加しており,補助療法としての効果を報告しています1)。人参養栄湯もまた,補剤として肺NTM症の治療に用いられています2)。12世紀の書物である『和剤局方』には,「脾肺倶に虚し,発熱,悪寒,四肢倦怠,肌肉消痩,面黄,短気,食少なく(中略)気血虚して諸症を現わすを治す」とあり,慢性炎症性疾患で疲労倦怠,著しい消耗状態にある場合に用いられていたことがうかがえます。このほか筆者らは茯苓四逆湯を用い,菌陰性化の持続,体重増加が認められるなど奏効した例を経験しています3)。茯苓四逆湯は胸痺(胸の痛みや圧迫感,呼吸苦など)に用いられる甘草乾姜湯の類方とも考えられ,人参は栄養・免疫状態を改善,乾姜には冷えの改善に加え抗炎症作用,さらに茯苓には安神作用として精神症状を伴う不定愁訴にも効果があるとされます。

    肺NTM症の治療では,長期的に患者の精神的ケアも含む全人的サポートが必須であるというのが全世界的に共通の認識です。漢方治療では直接の抗菌作用は確立されていませんが,栄養・免疫状態の改善や不定愁訴や精神的苦痛を和らげる効果が期待され,現代医学的標準治療に漢方薬を加えた統合医療が重要な役割を果たすと考えられます。

    【文献】

    1)Enomoto Y, et al:Plos One. 2014;9(8):e104411.

    2)野上達也, 他:結核. 2006;81(8):525-9.

    3)Suzuki T, et al:Front Nutr. 2021;8:761934.

    【回答者】

    鈴木朋子 埼玉医科大学東洋医学科教授

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