水腎症は,腎盂以下の尿路で尿がうっ滞することにより起こる腎盂,腎杯が拡張した状態である。水腎症の原因疾患は様々であり,尿路閉塞の程度や期間,腎盂腎炎の合併の有無によっては腎機能低下が不可逆的になることもあるので,重篤な腎機能障害を防ぐために,速やかに診断,評価し,治療する必要がある。
尿路閉塞の原因によりその後の治療方針が変わるので,まずは原因を精査する。
通常,結石の嵌頓などによる急性の上部尿路閉塞では,急激な腎盂内圧の上昇により側腹部痛,消化器症状(悪心・嘔吐)をきたし,尿路感染を併発すると腎盂腎炎を起こして発熱,場合によっては菌血症,敗血症を引き起こすこともあり,緊急の処置(逆行性尿管カテーテル留置や腎瘻造設)が必要である。腎盂腎炎を起こしていなくても片腎症例,機能的片腎や両側性の結石嵌頓などでは腎不全に至ることもあるので,早期の処置が必要である。
救急外来に腰背部痛で受診された場合,発熱の有無にかかわらずエコーまたはCTによる腎盂腎杯の拡張の有無を確認することが診断への第一歩である。一方,痛みを伴わない水腎症は,他疾患の精査中や検診時の腹部エコーで偶然発見されることが多い。無症候性の水腎症については,造影CTや逆行性腎盂造影が原因診断に役立つ。原因の確定とともに腎機能低下を疑う症例では,腎シンチグラフィなどで分腎機能もチェックする。
水腎症と誤診するものとして傍腎盂囊胞があるが,逆行性検査や造影CTで腎盂は圧排された像を示し,囊胞内には造影剤が入らないことから鑑別は可能である。
なお,小児では腎盂尿管移行部狭窄や膀胱尿管逆流など,成人とは主な原因が異なることに留意する。
治療は原因疾患によって異なり,また腎機能によっても変わる。基本的には,良性疾患ならば閉塞を解除して腎機能を保持するが,閉塞が長期にわたり,既に腎実質が菲薄化し閉塞を解除しても機能改善が見込めない場合,悪性が否定され症状がなければ経過観察のみの場合もありうる。
水腎症そのものに対する処方ではないが,結石嵌頓の場合は,疼痛緩和目的で鎮痛薬を処方し,発熱,腎盂腎炎を併発した場合は感受性のある抗菌薬を投与する。また,逆流性腎症を引き起こす可能性がある小児の場合は,予防的に抗菌薬を長期投与することがある。
後腹膜線維症による尿管の巻き込みでは,悪性リンパ腫など悪性腫瘍を除外した後にステロイド治療を行う。
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