SGLT2阻害薬はアントラサイクリン系薬剤治療下がん患者において、心イベント抑制が観察されている[Gongora CA, et al. 2022]。しかし免疫チェックポイント抑制剤(ICI)使用例では、SGLT2阻害薬に伴う心血管系(CV)イベント減少は見られず、逆に増加傾向。ただし「死亡」は、SGLT2阻害薬服用例で有意に抑制されていた。100例強の観察研究として、テルアビブ大学のMoran Gvili Perelman氏らが1月11日、Cardio-Oncology誌で報告した。
解析対象はICI使用の2型糖尿病合併がん患者、連続登録119例である。テルアビブ大学医療記録から抽出した。平均年齢は71歳、女性が38%を占めた。がん種としては非小細胞肺癌が最多(24%)で、腎癌(23%)、肝癌(19%)が続いた。
これら119例をSGLT2阻害薬「服用」群(20%)と「非服用」群に分け、「死亡」と「CVイベント」の発生率を比較した。CVイベントの内訳は「心筋炎、急性冠症候群、心不全増悪、不整脈」である。
・背景因子
がん種の分布はSGLT2阻害薬「服用」群と「非服用」群間に差はなく同様だった。同様にICI治療の種類、サイクル数にも差はなかった。またメトホルミン服用率にも群間差はなかった。虚血性心疾患既往はSGLT2阻害薬「服用」群で有意に多かったが(42% vs. 17%)、スタチン処方率も多かった(92% vs. 63%)。スタチン以外の心保護薬処方率は両群で同等だった。
・転帰
28カ月間(中央値)の死亡率はSGLT2阻害薬「服用」群で21%、「非服用」群が59%だった(P=0.002)。服用に伴う「死亡」ハザード比(HR)も、諸因子補正後、0.30(95%信頼区間[CI]:0.10-0.87)の有意低値となった。一方、「CVイベント」発生率は、SGLT2阻害薬「服用」群で増加傾向を認めた(17% vs. 13%、P=0.86)。「心不全増悪」のみで比較しても同様だった(8% vs. 5%)。なお「無進行生存率」にも有意な群間差はなかった(ただし「進展」は「服用」群で減少傾向[75% vs. 82%、P=0.431])。
SGLT2阻害薬「服用」群で死亡リスクが減少していた理由としてPerelman氏らは、同薬による抗腫瘍作用[Nasiri AR, et al. 2019]が作用した可能性を指摘している。一方、心不全増悪を含む「CVイベント」リスクが「服用」群で減少しなかった一因として、虚血性心疾患既往の多さを挙げていた。同氏らも記している通り、更なる検討が待たれる。
なお本研究に対する資金提供はなかったとのことである。