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急性呼吸窮迫症候群(ARDS)診療の現状と今後について

No.5206 (2024年02月03日発行) P.48

則末泰博 (東京ベイ・浦安市川医療センター救急・集中治療科(集中治療部門)部長)

中島幹男 (東京都立広尾病院救命救急センター部長/センター長)

登録日: 2024-02-01

最終更新日: 2024-01-30

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  • 急性呼吸窮迫症候群(acute respiratory distress syndrome:ARDS)診療の現状と今後についてご教示下さい。
    東京都立広尾病院・中島幹男先生にご解説をお願いします。

    【質問者】則末泰博 東京ベイ・浦安市川医療センター救急・集中治療科(集中治療部門)部長


    【回答】

    【原因の診断・治療が肝要であり,肺保護換気などは対症療法と心得る】

    ARDSとは,原因となる疾患や傷害に引き続いて発症する,血管内皮・肺胞上皮の透過性亢進によって生じる非心原性肺水腫です。

    現在の臨床におけるARDSの診断は,2012年に提唱されたベルリン定義に基づいています1)。①侵襲もしくは新規呼吸器症状の出現・悪化から1週間以内,②呼気終末陽圧(positive end-expiratory pressure:PEEP)≧5cmH2Oの条件下でPaO2/FIO2比≦300の低酸素血症,③胸部X線画像で胸水・無気肺などでは説明のつかない両側性陰影,④心不全や輸液過剰のみでは病態を説明できない,の4項目です。②で「PEEPをかけている状況下で」となっていますから,人工呼吸器が装着されていないとそもそもARDSと診断できないことになります。また,この診断基準では原因についての言及はありません。

    ARDSの原因となる主な病態としては,肺炎,敗血症,誤嚥などが多いと言われています2)。原因が様々であるのに一括りの症候群としていること,人工呼吸器,血液ガス分析,左心不全否定のための心エコーなどがないと診断しにくいことが,現状の問題点と言えるでしょう。

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