尿道腫瘍は尿道から発生するがんで高齢者に多い。尿道は,男性では後部尿道(前立腺部尿道,膜様部尿道),前部尿道(球部尿道,振子部尿道)からなり,前立腺部尿道,膜様部尿道は尿路上皮で覆われ,外尿道口付近の舟状窩までの前部尿道は重層円柱上皮,舟状窩は扁平上皮で覆われる。女性の尿道は男性より短く3~5cmで,後部の1/3が尿路上皮で,前部の2/3が扁平上皮で覆われる。発生部位により組織型は異なり,扁平上皮癌,尿路上皮癌,腺癌などがある。膀胱癌と異なり扁平上皮癌が最も多い。尿路上皮癌は膀胱癌と併発することが多い。稀な疾患のため,治療方針についての明確な指針がないというのが現状である。
一方,尿道カルンクルは女性の外尿道口に発生する良性腫瘍であり,閉経後の女性に発生することがほとんどで,尿道間質の炎症性変化が主体である。
顕微鏡的血尿,肉眼的血尿が主なものであるが,尿道括約筋よりも遠位側に発生した尿道腫瘍の場合は,下着に血がつくなどの訴えがある。また,排尿時痛を訴える場合や,腫瘍が増大すると排尿困難,尿線細小,尿閉などの排尿症状も認める。
尿道カルンクルは出血,会陰部の痛み,排尿時痛を認める。
血尿の精査のため膀胱鏡を実施するが,膀胱内の観察に加え尿道内の観察も行い診断する。尿細胞診検査も実施する。尿道腫瘍を認めた場合は,CT urography検査を行い,腎盂・尿管を含めた他の尿路に腫瘍がないかを検索する。MRI検査を行い,尿道腫瘍の深達度を評価する。
尿道カルンクルは,外尿道口から突出して発赤した表面平滑な易出血性の1~2cm程度までの腫瘍を視診で診断できるが,悪性疾患との鑑別が必要となることがある。
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