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腎盂腎炎[私の治療]

No.5211 (2024年03月09日発行) P.43

濵砂良一 (国家公務員共済組合連合会新小倉病院副院長/泌尿器科部長)

登録日: 2024-03-09

最終更新日: 2024-03-05

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  • 腎盂腎炎は,尿路の逆行性感染により惹起される有熱性尿路感染症である。合併症を有さない急性単純性腎盂腎炎と,尿路の基礎疾患(前立腺肥大症,神経因性膀胱,尿路腫瘍,結石など)や糖尿病やステロイド内服など全身性易感染状態に合併する複雑性腎盂腎炎に分類される。尿路の閉塞を伴うものは,特に重症となる。急性単純性腎盂腎炎は,性的活動期にある女性に好発する。男性の腎盂腎炎はすべて複雑性として扱う。

    ▶診断のポイント

    症状は,先行する膀胱炎症状に加え(自覚しない症例も多い),発熱,全身倦怠感などの全身症状と,患側の肋骨脊柱角(CVA)の圧痛または叩打痛の局所症状を認める。嘔気・嘔吐などを認めることもある。検尿では膿尿と細菌尿を認める。血液検査では白血球増多,核の左方移動,CRP上昇など炎症所見がみられる。尿培養,薬剤感受性検査は治療方針決定に必須である。血液培養も併せて行う。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    急性単純性腎盂腎炎の原因菌の約70%はEscherichia coliであるが,複雑性腎盂腎炎の原因菌は多岐にわたるため,予測できない。単純性,複雑性かの判断は重要である。若年女性では急性単純性腎盂腎炎が多いが,その他の症例ではエコーやCTなどの検査を行う。特に閉塞性腎盂腎炎(水腎症を合併する可能性が高い)は重症で,容易に菌血症,敗血症(ウロゼプシス)に移行するため,腎瘻や尿管ステント留置など,上部尿路のドレナージの適応となる。

    腎盂腎炎では軽症・中等症(外来に通院できるか)と重症(入院が必要)で治療方針が異なる。いずれも安静,水分摂取が必要である。軽症・中等症では,経口抗菌薬による約7~14日間の治療を基本とする。初診時に半減期の長い注射用抗菌薬を用い,その経口抗菌薬による治療法も容認される。重症例では,入院による注射用抗菌薬(原則的には第2~3世代セファロスポリン)による治療を行う。複雑性では,軽症・中等症には経口抗菌薬にて原則14日間の治療をする。重症例(急性増悪時)では入院の上,注射用抗菌薬で治療を行う。閉塞性の腎盂腎炎では,カルバペネム系抗菌薬やβラクタマーゼ配合ペニシリンを用いてよい。複雑性腎盂腎炎では,基礎疾患の改善がなければ,腎盂腎炎の完治は望めず,再発を繰り返すことが多い。いずれの症例も,尿培養,薬剤感受性検査の結果をみて,適切にde-escalationを行う。注射用抗菌薬による治療で解熱した場合には,解熱後24時間をめどに経口抗菌薬に切り替え,合計14日間の治療を行う。

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