東アジア人の2型糖尿病(DM)例では、HbA1c値と死亡リスク間に「Jカーブ現象」が存在し、死亡リスクが最小となるHbA1c値は「6.5-7.0%」であるようだ。中国で1万例以上を約5年間観察した結果、明らかになった。浙江省立疾病管理・予防センターのQingfang He氏らが3月12日、Journal of Diabetes Investigation誌で報告した。
なおわが国ガイドラインはHbA1c目標値として、「多くの患者には細小血管症予防の観点から7.0%未満」を推奨した上で、「低血糖などの副作用がなく達成可能であれば6.0%未満」、「低血糖などの副作用やその他の理由で治療の強化が難しい場合には8.0%未満」を推奨している。
今回の解析対象は、中国農村地域の2型DM 1万310例である。2016年から観察を開始した。平均年齢は63.5歳、2型DM罹患期間は平均6.4年間である。BMI平均値は24.8kg/m2。78.8%が経口血糖降下薬を服用しており、HbA1c平均値は7.4%だった。
これら1万310例を対象に、観察開始時HbA1c値とその後の死亡リスクの関係を調べた。死亡リスク算出にあたっては、年齢と性別、DM罹患期間、肥満度、喫煙、血糖降下薬使用の有無、高血圧・脂質異常症合併の有無―を補正した。
・死亡率
平均5.53年の観察期間中に9.4%(1.7%/年)が死亡した。死亡時の平均年齢は69.1(±9.6)歳だった。
・HbA1c値別の死亡リスク
観察開始時HbA1c値と死亡リスクの間には「Jカーブ現象」を認めた。すなわち死亡リスク最小だったHbA1cは「6.5-7.0%」群。そして「≧8.0%」群と「<5.5%」群では「6.5-7.0%」群に比べ死亡リスクが有意に高くなっていた。諸因子補正後のハザード比(HR)は、「8.0-9.0%」群で1.44(95%信頼区間[CI]:1.14-1.83)、「<5.5%」群で1.53(95%CI:1.08-2.15)である。なお、死亡リスクの上昇(傾向)はHbA1c値「≧7.0%」「<6.0%」の時点で認められたとも、He氏らは記している。
・亜集団解析
上記の「Jカーブ現象」は「血糖降下薬使用」の有無、「BMI」の高低、「糖尿病罹患歴」の長短(5年間を基準)を問わず認められた(交互作用P>0.1)。同様に「高血圧」「脂質異常症」合併の有無や「喫煙習慣」の有無もこの「Jカーブ現象」に有意な影響は与えていなかった。
本研究は中国政府機関、地方自治体からの資金提供を受けて実施された。