膠原病は,肺動脈性肺高血圧症(pulmonary arterial hypertension:PAH)の高リスク群で,特に全身性強皮症(systemic sclerosis:SSc),混合性結合組織病(mixed connective tissue disease:MCTD)では10%程度,全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus:SLE),シェーグレン症候群などでは3%未満に併発する。PAHの病態は,肺動脈の免疫炎症から線維化まで幅広く,また,左心疾患や間質性肺疾患に伴う肺高血圧症,慢性血栓塞栓性肺高血圧症,肺静脈/肺毛細血管病変を伴う混合病態を呈する場合がある。病態ごとに予後,治療方針が異なる。
経胸壁心エコーによるスクリーニングを積極的に行うことで早期診断に努める。SLE,MCTDでは,労作時息切れなどの自覚症状の出現時だけでなく,膠原病発症時,疾患活動性上昇時にスクリーニングを実施する。SScでは,罹病期間の長い限局皮膚硬化型に伴うことが多く,自覚症状の有無にかかわらず毎年の定期的なスクリーニングが推奨されている。
PAH治療の基本は特発性/遺伝性PAHと同様に支持療法,肺血管拡張療法である1)が,SSc以外の膠原病に伴うPAHでは,免疫抑制療法の有効例がみられるという特徴がある。免疫抑制療法の反応例では,血行動態正常化など顕著な効果が得られるため,肺血管拡張薬より優先する。
一方,SScでは免疫抑制療法の効果は乏しく,リスク分類に応じて肺血管拡張薬の初期併用療法を原則とする。ただし,左心疾患,間質性肺疾患,肺静脈/肺毛細血管病変を伴う混合病態が疑われる例では,肺血管拡張薬を単剤で少量から開始し,酸素化やうっ血の悪化がないことをモニタリングしながら増量,併用を試みる。
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