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腎・尿管損傷[私の治療]

No.5220 (2024年05月11日発行) P.44

中川 徹 (帝京大学医学部泌尿器科学講座主任教授)

登録日: 2024-05-14

最終更新日: 2024-05-07

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  • 外因性の腎損傷は,泌尿器外傷の中で最も多い。わが国ではほとんどが鈍的外傷によるものであり,頻度の高い順に交通事故,転倒・転落,スポーツ外傷,暴力となっている。銃創・刺創・切創などの穿通性外傷による腎損傷は,わが国では少ない。
    尿管損傷はほとんどが手術操作による医原性で,外因性は稀である。婦人科手術が最多で,ほかに直腸癌などに対する骨盤内外科手術,尿路結石に対する尿管鏡操作などによるものである。術中に気づく場合と,術後に判明する場合がある。

    ▶診断のポイント

    腎損傷では,背部痛と肉眼的血尿が主な症状である。受傷機転から腎外傷を疑う。

    造影CTで,腎実質損傷,腎血管損傷,血腫の広がり,尿漏を評価し,日本外傷学会の「腎損傷分類2008」に基づいて重症度を判定する(表)1)。全身状態が許す限りマルチフェーズCT撮影とし,動脈相で動脈損傷,実質相で腎実質損傷,排泄相~遅延相で尿漏を判定する。

    医原性の尿管損傷は,軽度の場合は術中に気づかれないことも多い。エネルギーデバイスの普及により,熱損傷による尿管損傷が術後に判明する例も増えている。術後は,ドレーンや腟(婦人科手術の場合)からの排液の持続・増加で,尿管損傷を疑う。排液のクレアチニン濃度が血清よりも異常高値であれば,尿溢流と判定できる。ドレーン抜去後であれば,発熱などを契機にCTを撮影し,液体貯留を認めた場合に,尿管損傷の可能性を疑う。

    尿管損傷の評価は,造影CT(排泄相~遅延相を含む),逆行性あるいは順行性尿管造影で行う。

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