アルコール摂取は血圧を上げ [Federico SD, et al. 2023] 、摂取抑制による降圧作用も強く示唆されている [Roerecke M, et al. 2017] 。しかし「特定のアルコールなら好影響を与えるのではないか」、このような淡い期待が(愛飲家には)残っていたのも事実だ。しかし5月13日、American Journal of Medicine誌に掲載された観察研究は、その可能性をも否定した。著者はコペンハーゲン大学(デンマーク)のGorm Boje Jensen氏ら。
今回解析対象となったのは、コペンハーゲン在住のデンマーク系白人10万4467名である。平均年齢は50歳代後半、女性が54%を占めた。
これら10万4467名を対象に、「1週間当たりアルコール摂取量」と「血圧」の関係を探った。さらにアルコール飲料ごとでも、この関係は検討された(赤・白ワイン、ビール、スピリッツ、デザートワイン)。アルコール摂取量は1週間当たりの杯数を調査票で把握した。調査票では「喫煙状況」「食事」「余暇身体活動性」も把握した。
・アルコール飲料全体
アルコール飲料の1週間飲酒量が「35杯超」群の血圧は「1~2杯」群に比べ、「11/ 7 mmHg」の有意高値だった。なお降圧薬服用率は「35杯超」群のほうが高い(28% vs. 17%)。また諸因子補正後も、1週間アルコール摂取杯数が増えるに従い、収縮期血圧・拡張期血圧とも高値となる強力な相関を認めた(相関係数と検定不詳)。この傾向は男女ともに観察された。
・アルコール飲料別
アルコールの種類別に解析すると、1週間摂取杯数増加に伴う昇圧度は、赤ワインと白ワイン、ビール間で差はなく、ほぼ同じだった(男女とも)。具体的な昇圧幅は「1杯/週」増加に伴い、「0.15~0.17/0.08 ~0.15 mmHg」である。一方、スピリッツ/デザートワインでは拡張期血圧が、杯数依存性の低下(脈圧上昇)傾向を示した(いずれも検定不詳)。
・感度分析
感度分析(除「心筋梗塞・脳卒中・がん既往例」(11%)、除「降圧薬服用例」など)でも、結果は同様だった。
Jensen氏らは問診におけるアルコール摂取状況把握の重要性を説くとともに、降圧治療にあたっては「1日1杯までの節酒」を勧めるべきだと述べている。
なおわが国の「高血圧ガイドライン2019」では、節酒の目安として1日の摂取量を「おおよそ日本酒1合、ビール中瓶1 本、焼酎半合、ウィスキーダブル1杯、ワイン2杯」に制限することを勧めている。
本研究はコペンハーゲン市とデンマーク心臓基金、デンマーク肺協会、Velux財団、並びにLundbeck財団から資金提供を受けた。
著者たちに開示すべき利益相反はないとのことである。