3歳と高校生のときに肺炎で入院し,15年前の出産後から咳や痰が出やすくなり,12年前に初めて当院を受診しました。当時から両側にびまん性の陰影があり,間質性肺炎のようにみえますが,胸部CTで気管支拡張症と診断しました。子どもがいることから,線毛機能不全症候群ではなく,副鼻腔の病変も目立たないことから,幼時期の重症肺炎が主な原因と考えられます。
去痰薬とマクロライドの少量長期投与で治療し,6年前から在宅酸素療法を行っていましたが,3週間前から息切れの悪化と体重増加,38℃の発熱も認め,救急受診をしました。
診察時には起坐呼吸で,著しい下肢の浮腫を,聴診では特に,両側で背部に強いクラックルを聴取しました。胸骨下部が右室拍動で持ち上がるright ventricular liftと,右心不全を示す肝叩打痛があり,肺高血圧,肺性心を認めました。病状が小康となった2週間目でも肺音はほぼ同じで,呼気にかかるクラックルを聴取しました(図1)。
入院時の胸部X線では,びまん性の陰影と軽度の心拡大,肺門陰影の拡大を認めます(図2)。胸部CTでは,両側に不規則な分布の囊状気管支拡張像と,その周囲の広範な浸潤影を認めます(図3)。
【検査所見】
SpO2 78%,リザーバマスク15L 96%,呼吸数35回/分,心拍数132回/分,WBC 5.7×103/μL,CRP 0.17mg/dL,BNP 978pg/mLで,感染による悪化ではなく,肺性心,右心不全が主な病態と考えられました。