アミロイド腎症は,アミロイド線維が腎組織に沈着することで腎機能障害・尿所見異常をきたす疾患である。原因としてAL型とAA型アミロイドーシスの頻度が高く,中高年発症のネフローゼ症候群・慢性腎炎症候群の鑑別として重要な疾患のひとつである。
緩徐な尿蛋白増加と腎機能低下が臨床的特徴である。蛋白尿の程度は,軽度からネフローゼレベルまで様々である。腎生検を行い,腎組織へのアミロイド線維の沈着を確認することで確定診断がなされる。
また背景疾患鑑別のため,血清遊離軽鎖のκ/λ比,M蛋白同定のための免疫固定法・免疫電気泳動法(AL型),リウマトイド因子,抗CCP抗体(AA型)の測定も有用であるほか,他臓器の臨床・検査所見も重要である。
慢性腎臓病(CKD)の治療と,背景疾患に対する治療の両者が必要である。
蛋白尿を伴う場合,腎保護の観点からレニン-アンジオテンシン(RA)系阻害薬やSGLT2阻害薬の使用を考慮するが,アミロイド腎症においての有用性は証明されていない。また,拘束型心筋障害や自律神経障害により,腎機能が低下しても高血圧をきたさない症例もあり,過度な降圧には留意する。蛋白質・食塩制限などの食事療法も重要である。CKDの進行とともに生じる,電解質異常,体液異常,高血圧,腎性貧血などの症候には都度対症療法を行う。末期腎不全に至った場合は,透析や腎移植などの腎代替療法が必要である。
AL型アミロイドーシスの場合,異常免疫グロブリン軽鎖の産生を抑制する治療が必要である。移植の適格基準を満たせば,自家末梢血幹細胞移植併用大量メルファラン(HDM/ASCT)療法が考慮される。適格基準としてMayo Clinicの基準1)などが参考になるが,治療関連死亡の懸念もあり,個々の症例で慎重に見きわめることが重要である。特に,重症な心病変のある症例では,治療関連死亡および生存率に影響を与えるとの報告があり,注意する。
移植が不適の場合,メルファラン-デキサメタゾン(MEL/DEX)療法やボルテゾミブを含む治療レジメンが選択される。さらに2021年,わが国でもCD38モノクローナル抗体であるダラツムマブが承認された。CyBorD(シクロホスファミド,ボルテゾミブ,デキサメタゾン併用)療法と比較して,ダラツムマブを上乗せしたD-CyBorD療法の有用性が示されており,新たな選択肢となった。
AA型アミロイドーシスの場合,慢性炎症を呈する背景疾患の治療が重要である。原因疾患の90%を占める関節リウマチでは,IL-6阻害薬やTNF阻害薬などの生物学的製剤の使用が血清アミロイドA(SAA)を抑制し,死亡率を低下させる効果があるとの報告がある。腎機能による用量調節は不要とされ,腎機能障害がある場合でも生物学的製剤は使用可能であるが,安全性や有用性のエビデンスは十分でない。感染リスク等も鑑みた選択が必要である。
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