GIP/GLP-1-RAのチルゼパチドは重度の睡眠時無呼吸(OSA)を呈する肥満例の体重を減らすだけでなく、OSAも改善することが、ランダム化比較試験 "SURMOUNT-OSA" の結果、明らかになった。6月21日より米国オーランドで開催された、米国糖尿病学会学術集会にて、カリフォルニア大学(米国)のAtul Malhotra氏らが報告した。
本試験の対象は、BMI「≧30kg/m2」(日本は「≧27kg/m2」)かつ、無呼吸低呼吸指数(AHI)「≧15回/時」の成人569例である。糖尿病(DB)合併例や中枢性OSA例、またOSA/肥満手術予定例は除外されている。234例は陽圧呼吸療法(PAP)非施行、235例はPAP施行下だった。平均年齢は約50歳、女性がおよそ30%を占めた。
肥満度はかなり高く、体重平均値が約115kg、BMI平均は39kg/m2だった。OSA重症度も高く、AHI平均値はCPA非施行群が51.5回/時、施行群で49.5回/時だった。患者背景を報告したRichard J Schwab氏(ペンシルバニア大学、米国)はこの患者群を「日々の臨床で診る患者と大きく異なってはいない」と評価した。しかし質疑応答では「プライマリケアではこのような重症OSAは一般的ではない」という声も上がった。
これら469例は全例が標準的な生活習慣改善指導を受けた上で、PAP施行の有無別にチルゼパチド群(15mg/週目標)とプラセボ群にランダム化され、二重盲検法で観察された。
・AHI変化幅(1次評価項目)
52週間観察後、チルゼパチド群ではプラセボ群に比べPAP施行の有無を問わず、AHIは有意に低値となっていた(対プラセボ変化量は、PAP非施行群:-20回/時、施行群:-28.3回/時)。チルゼパチド群における改善は試験開始直後から観察され、両群の差は試験期間を通じて広がり続けた。
・体重(2次評価項目の1つ)
チルゼパチド群では体重もプラセボ群に比べ著明かつ有意に低下した。52週間経過後の群間差はPAP非施行例で16.1%、施行群例は17.3%である。チルゼパチド群における減量は、試験開始直後から観察され、低下傾向は試験終了の52週間後まで維持された。なお結果報告にあたったAtul Malhotra氏(カリフォルニア大学、米国)によれば、体重減とAHI改善が相関しているかどうかは、これから解析予定だという。
・CVリスク因子/転帰
チルゼパチド群では、CRP、収縮期血圧ともプラセボ群に比べ有意に低値となった。なお「CV系重篤イベント(MACE)」は有害事象として「注意深く観察された」(Malhotra氏)が、観察されたのはPAP施行プラセボ群の1例のみだった。
・安全性
チルゼパチド群の有害事象は消化器症状がメインで、予想外のものはなかった。膵炎も、PAP施行チルゼパチド群に2例を認めたのみだった(いずれも軽症)。
・亜集団解析
開始肥満度の高低、人種別などの亜集団解析は報告されなかった。
本試験は報告と同時に、NEJM誌にWebサイトで論文が公開された。なお本研究はEli Lillyからの資金提供を受け、同社は試験プロトコル作成にも参加した。また最終著者を含む著者4名は同社に所属し、別の社員も論文作成を補助した。