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膀胱損傷・尿道損傷・陰茎損傷[私の治療]

No.5234 (2024年08月17日発行) P.51

堀口明男 (防衛医科大学校泌尿器科学講座准教授/同大学校病院外傷再建部部長)

登録日: 2024-08-14

最終更新日: 2024-08-14

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  • いずれも稀な損傷である。致死的損傷ではないが,適切な治療を選択しないと患者のQOLを大きく損ねる可能性がある。専門的治療を要するので,速やかに泌尿器科専門医へコンサルトすることが望ましい。

    ▶診断のポイント

    【膀胱損傷】

    交通外傷などの鈍的外傷に起因することが多い。損傷部位により,腹膜内破裂,腹膜外破裂,腹膜内外破裂に分類される。腹膜内破裂は膀胱が緊満しているほど起こりやすく,シートベルトなどによる腹部の圧迫によって膀胱壁の最も弱い膀胱頂部が損傷する。骨盤骨折の患者に肉眼的血尿がみられる例では高率に膀胱損傷が認められる。膀胱造影もしくはCT膀胱造影が診断に有用である。10倍程度に稀釈した造影剤を300~400mLほど尿道から膀胱へ逆行性に注入して撮影する。

    【尿道損傷】

    圧倒的に男性の鈍的外傷が多い。会陰部の打撲による騎乗型外傷に伴う球部尿道損傷,交通外傷や労働災害に起因する骨盤輪骨折に伴う後部尿道損傷が代表的である。外尿道口からの出血,排尿困難や尿閉,会陰部から陰囊の蝶形皮下血腫が定型的な症状である。逆行性尿道造影が診断に有用であり,尿道外への造影剤の溢流があれば診断が確定する。合併臓器損傷により循環動態が不安定な場合は,尿道造影を省略して膀胱瘻を造設する。

    【陰茎損傷】

    鈍的外傷として陰茎折症,鋭的外傷として陰茎切断が代表的である。いずれも特徴的な経過,臨床症状,身体所見から診断自体は容易である。陰茎折症は,性行為や自慰行為などによる勃起した陰茎への鈍的外力によって陰茎海綿体白膜が断裂することにより生じる。臨床所見にて診断が確定できない場合には超音波検査やMRIが有用である。血尿や排尿困難を認める例は尿道海綿体の合併損傷を疑う。陰茎切断の多くは自傷行為によるもので,精神科的疾患を合併している頻度が高いことに注意する。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    膀胱損傷は損傷部位により,尿道カテーテル留置による保存的治療と外科的修復の選択を考慮する。尿道損傷では,速やかな尿のドレナージルート確保が肝要である。むやみに尿道カテーテルを挿入することは慎み,膀胱瘻を造設する。陰茎損傷は即時外科的修復が原則である。

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