慢性胃炎は,胃粘膜において組織学的な慢性炎症が存在することがその定義である。しかしながら,日常臨床では胃の組織学的検査が行われないことも多く,内視鏡的に発赤や浮腫,萎縮などの所見を慢性胃炎と診断しているのが実情である。
慢性胃炎患者の多くは無症状であるが,時に上腹部痛,胸やけ,悪心,もたれ感を訴える例もある。
原則として上部消化管内視鏡検査を行い,内視鏡所見,および可能であれば生検組織の病理診断によって確定診断が行われる。その原因のほとんどがHelicobacter pylori(H. pylori)感染に起因する。その他の原因としては非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)や抗菌薬などによる薬剤性,自己免疫性胃炎が多く,少数例ではあるが,好酸球性胃腸症,炎症性腸疾患,時にクローン病などによるものが存在する。
H. pyloriによる組織学的胃炎は,除菌療法によって改善することから,原則として除菌治療を行う。ただし,H. pylori除菌治療にあたっては,内視鏡による胃炎の確認が必須となっている。薬剤性の場合はNSAIDsや抗菌薬内服の中止を考慮する。薬剤を中止できない場合や炎症所見が継続する場合には,酸分泌抑制薬や粘膜保護薬などを使用する。
慢性胃炎患者で症状を訴える場合,上記の炎症改善の治療を行いつつ,自覚症状に合わせた治療を行う。炎症が改善したにもかかわらず,上腹部痛や腹部膨満感などを訴える場合は機能性ディスペプシアと診断し,その治療を行う(他稿参照)。慢性胃炎の治療目的では,酸分泌抑制薬のプロトンポンプ阻害薬に保険適用はない。
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