フィネレノンはレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系抑制薬として初めて、左室機能軽度低下/維持心不全(HFmr/pEF)の心血管系(CV)転帰改善作用がランダム化比較試験(RCT)"FINEARTS-HF"で確認された。
今回、事前設定追加解析として、心不全(HF)増悪からランダム化までの期間の長短がフィネレノンの有用性に及ぼす影響が明らかになった。この亜集団解析は、本試験が報告された欧州心臓病学会でも注目を集めていた(本誌既報)。結果として統計学的に有意な交互作用こそ認められなかったものの、フィネレノンはHF増悪直後から開始したほうが心保護、腎保護とも好ましい傾向が見られた(特に腎保護)。ブリガム・アンド・ウィミンズ病院(米国)のAkshay S. Desai氏らが9月29日、Journal of the American College of Cardiology誌で報告した。
FINEARTS-HF試験の対象は、利尿薬使用下で「左室駆出率(EF)≧40%」、かつ「NT-proBNP上昇」と「左室・左房の拡大/肥大」を認めた、40歳以上の症候性HF 6001例である。「推算糸球体濾過率(eGFR)<25mL/min/1.73m2」例や「血清カリウム>5.0mmol/L」例などは除外されている。平均年齢は72歳、女性が46%を占めた。EF<50%例は36%、NT-proBNP中央値は1000pg/mL強だった。
本解析では上記患者をランダム化前のHF増悪時期で3群に分け、フィネレノンが「CV死亡・全HF増悪」に及ぼす影響をプラセボと比較した。3群の内訳は、「HF増悪からランダム化まで3カ月超/HF増悪既往なし」(45.9%)、「HF増悪からランダム化まで7日~3カ月」(33.8%)、「HF増悪からランダム化まで7日以内」(20.3%)である。
・「CV死亡・全HF増悪」発生リスク
「HF増悪からランダム化までの期間」は「CV死亡・全HF増悪リスク」と逆相関する傾向が見られた。すなわち「CV死亡・全HF増悪リスク」ハザード比(HR)は、「HF増悪からランダム化まで7日以内」群に比べ、「7日~3カ月」群では0.81(95%CI:0.69-0.96)、「3カ月超/HF増悪既往なし」群ならば0.47(同:0.40-0.55)と、いずれも有意低値となっていた。
・フィネレノンによる「CV死亡・全HF増悪」抑制
フィネレノンによる「CV死亡・全HF増悪」抑制作用は、「HF増悪からランダム化までの期間」が長くなるに従い減弱する傾向を認めた。対プラセボ群HRは、「HF増悪からランダム化まで7日以内」群なら0.74(95%CI:0.57-0.95)だったのに対し、「3カ月超/HF増悪既往なし」群では0.99(同:0.81-1.21)だった(「7日~3カ月」群は0.79[0.64-0.97])。ただしInteraction Trend P値は0.07である。
・腎イベント
フィネレノン群では、腎イベント(eGFR半減持続・「<15mL/min/1.73m2」へのeGFR低下・透析/腎移植)リスクも同様に、「HF増悪からランダム化までの期間」が長くなるほど減弱する傾向を認めた。すなわち対プラセボ群HRは、「HF増悪からランダム化まで7日以内」群ならば0.99(95%CI:0.50-1.94)だったが、「7日~3カ月」群では1.10(同:0.61-1.96)、さらに「3カ月超/HF増悪既往なし」群に至っては2.13(同:1.17-3.87)の有意高値だった(Interaction Trend P値は0.06)。
Desai氏らは、HF増悪からフィネレノン服薬開始までの期間はHFmr/pEF転帰改善作用に影響を与えないとする一方、同剤の効果と安全性のバランスはHF増悪直後開始のほうが良いと考えているようである。
FINEARTS-HF試験はBayer AGから資金提供を受けて実施された。