株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

【文献 pick up】HFmr/pEFに対するフィネレノンの有用性はHF増悪から服薬開始までの期間に左右されるか?:RCT“FINEARTS-HF”事前設定追加解析/JACC誌

宇津貴史 (医学レポーター)

登録日: 2024-10-08

最終更新日: 2024-10-08

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フィネレノンはレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系抑制薬として初めて、左室機能軽度低下/維持心不全(HFmrpEF)の心血管系(CV)転帰改善作用がランダム化比較試験(RCT"FINEARTS-HF"で確認された。

今回、事前設定追加解析として、心不全(HF)増悪からランダム化までの期間の長短がフィネレノンの有用性に及ぼす影響が明らかになった。この亜集団解析は、本試験が報告された欧州心臓病学会でも注目を集めていた(本誌既報)。結果として統計学的に有意な交互作用こそ認められなかったものの、フィネレノンはHF増悪直後から開始したほうが心保護、腎保護とも好ましい傾向が見られた(特に腎保護)。ブリガム・アンド・ウィミンズ病院(米国)のAkshay S. Desai氏らが929日、Journal of the American College of Cardiology誌で報告した。

【対象】

FINEARTS-HF試験の対象は、利尿薬使用下で「左室駆出率(EF≧40%」、かつ「NT-proBNP上昇」と「左室・左房の拡大/肥大」を認めた、40歳以上の症候性HF 6001例である。「推算糸球体濾過率(eGFR)<25mLmin1.73m2」例や「血清カリウム>5.0mmolL」例などは除外されている。平均年齢は72歳、女性が46%を占めた。EF50%例は36%NT-proBNP中央値は1000pgmL強だった。

【方法】

本解析では上記患者をランダム化前のHF増悪時期で3群に分け、フィネレノンが「CV死亡・全HF増悪」に及ぼす影響をプラセボと比較した。3群の内訳は、「HF増悪からランダム化まで3カ月超/HF増悪既往なし」(45.9%)、「HF増悪からランダム化まで7日~3カ月」(33.8%)、「HF増悪からランダム化まで7日以内」(20.3%)である。

【結果】

・「CV死亡・全HF増悪」発生リスク

HF増悪からランダム化までの期間」は「CV死亡・全HF増悪リスク」と逆相関する傾向が見られた。すなわち「CV死亡・全HF増悪リスク」ハザード比(HR)は、「HF増悪からランダム化まで7日以内」群に比べ、「7日~3カ月」群では0.8195%CI0.69-0.96)、「3カ月超/HF増悪既往なし」群ならば0.47(同:0.40-0.55)と、いずれも有意低値となっていた。

・フィネレノンによる「CV死亡・全HF増悪」抑制

フィネレノンによる「CV死亡・全HF増悪」抑制作用は、「HF増悪からランダム化までの期間」が長くなるに従い減弱する傾向を認めた。対プラセボ群HRは、「HF増悪からランダム化まで7日以内」群なら0.7495%CI0.57-0.95)だったのに対し、「3カ月超/HF増悪既往なし」群では0.99(同:0.81-1.21)だった(「7日~3カ月」群は0.790.64-0.97])。ただしInteraction Trend P値は0.07である。

・腎イベント

フィネレノン群では、腎イベント(eGFR半減持続・「<15mLmin1.73m2」へのeGFR低下・透析/腎移植)リスクも同様に、「HF増悪からランダム化までの期間」が長くなるほど減弱する傾向を認めた。すなわち対プラセボ群HRは、「HF増悪からランダム化まで7日以内」群ならば0.9995%CI0.50-1.94)だったが、「7日~3カ月」群では1.10(同:0.61-1.96)、さらに「3カ月超/HF増悪既往なし」群に至っては2.13(同:1.17-3.87)の有意高値だった(Interaction Trend P値は0.06)。

【考察】

Desai氏らは、HF増悪からフィネレノン服薬開始までの期間はHFmrpEF転帰改善作用に影響を与えないとする一方、同剤の効果と安全性のバランスはHF増悪直後開始のほうが良いと考えているようである。

FINEARTS-HF試験はBayer AGから資金提供を受けて実施された。

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

もっと見る

関連求人情報

公立小浜温泉病院

勤務形態: 常勤
募集科目: 消化器内科 2名、呼吸器内科・循環器内科・腎臓内科(泌尿器科)・消化器外科 各1名
勤務地: 長崎県雲仙市

公立小浜温泉病院は、国より移譲を受けて、雲仙市と南島原市で組織する雲仙・南島原保健組合(一部事務組合)が開設する公設民営病院です。
現在、指定管理者制度により医療法人社団 苑田会様へ病院の管理運営を行っていただいております。
2020年3月に新築移転し、2021年4月に病院名を公立新小浜病院から「公立小浜温泉病院」に変更しました。
6階建で波穏やかな橘湾の眺望を望むデイルームを配置し、夕日が橘湾に沈む様子はすばらしいロケーションとなっております。

当病院は島原半島の二次救急医療中核病院として地域医療を支える充実した病院を目指し、BCR等手術室の整備を行いました。医療から介護までの医療設備等環境は整いました。
2022年4月1日より脳神経外科及び一般外科医の先生に常勤医師として勤務していただくことになりました。消化器内科医、呼吸器内科医、循環器内科医及び外科部門で消化器外科医、整形外科医の先生に常勤医師として勤務していただき地域に信頼される病院を目指し歩んでいただける先生をお待ちしております。
又、地域から強い要望がありました透析業務を2020年4月から開始いたしました。透析数25床の能力を有しています。15床から開始いたしましたが、近隣から増床の要望がありお応えしたいと考えますが、そのためには腎臓内科(泌尿器科)医の先生の勤務が必要不可欠です。お待ちいたしております。

●人口(島原半島二次医療圏の雲仙市、南島原市、島原市):126,764人(令和2年国勢調査)
今後はさらに、少子高齢化に対応した訪問看護、訪問介護、訪問診療体制が求められています。又、地域の特色を生かした温泉療法(古くから湯治場として有名で、泉質は塩泉で温泉熱量は日本一)を取り入れてリハビリ療法を充実させた病院を構築していきたいと考えています。

もっと見る

関連物件情報

もっと見る

page top