胎児機能不全とは,妊娠中あるいは分娩中に胎児の状態を評価する臨床検査において「正常ではない所見」が存在し,胎児が健康であることに確信が持てない場合と定義される。胎児機能不全の原因は母体,胎児,胎盤,臍帯など様々であり,母体年齢の高齢化に伴い,合併症を有する妊婦は増加傾向にあるため,母体合併症に伴う胎児機能不全に留意する必要がある。
胎児well-beingの評価には胎児心拍数モニタリングや胎児超音波断層法が用いられる。胎動カウントは母体が胎児状態をチェックできるという意味で有意義である可能性がある。しかし,5つのrandomized controlled trialを含んだ45万例を超えるメタ解析では胎動カウントの有用性は示されなかった1)。一方,胎動減少は胎児発育不全や子宮内胎児死亡と関連することから,重要な指標のひとつと言える。
また,日常臨床においては,超音波断層法を用いて胎児の呼吸様運動と筋緊張,胎動,羊水量を測定し,胎児心拍数モニタリングの所見と合わせてbiophysical profile scoring(BPS)を用いて胎児well-beingを評価する。BPSに基づいた管理方法として,羊水量の減少は急性期にはきたしにくいことから,羊水量が減少してきた際にはより慎重な管理が求められる。BPSの問題点は30分間の観察を要することであり,胎児の状態次第では30分もの時間をかけられないこともある。胎児心拍数モニタリングによる一過性多呼吸と胎児の呼吸様運動の胎児アシドーシスへの感度が同等であるとの考え方から,ハイリスク胎児に対して胎児心拍数モニタリングと羊水量(amniotic fluid index>5)のみで評価を行うBPSを簡略化したmodified BPSも提唱されている。胎児心拍数モニタリングは5段階評価であり,レベル3〜5が胎児機能不全とされる。
基本的には胎児機能不全を治療する方法はなく,いかに状態よく胎児を娩出し出生後の治療につなげるかが重要なポイントとなる。胎児心拍数モニタリングは5段階評価であり,レベル3〜5が胎児機能不全と考えられているが,偽陽性率が高く,異常であると判断されても児の状態が悪いとは限らないことに留意する。
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