株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

安定狭心症[私の治療]

No.5245 (2024年11月02日発行) P.44

上妻 謙 (帝京大学医学部内科学講座循環器内科教授)

登録日: 2024-10-31

最終更新日: 2024-10-29

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
    • 1
    • 2
  • next
  • 安定狭心症は,心筋虚血に伴い,主に労作時の胸部不快感や息切れを主訴とする疾患で,生命を直接脅かすイベント発生の頻度がそれほど高くないため,症状や生活の質(QOL)の改善が,治療の目的となっている。冠動脈が狭窄・閉塞している狭心症のほかに,冠動脈に狭窄がない微小血管狭心症や冠攣縮性狭心症などによる狭心症〔非閉塞性冠動脈疾患(INOCA)と総称される〕が多いことがわかってきた。

    ▶診断のポイント

    【症状】

    一過性の胸痛,胸部不快感や息切れが起こる。心臓が原因の症状であるかを聴取することが重要である。胸部症状はその性状によって,典型的狭心症,非典型的狭心症,非心臓性胸痛に分類される。①部位を限定できない胸骨下(または頸部,顎,肩,腕)の絞扼感または締めつけられるような痛み,②運動や精神的ストレスによる増悪,③安静もしくはニトログリセリンによる5分以内の症状改善,が典型的狭心症の特徴である。痛みが1つのみに合致,もしくは1つも合致しない場合には,非典型的狭心症,非心臓性胸痛と考えられる。

    【検査所見】

    年齢,性別,冠危険因子,安静時心電図,心エコーなどの情報を合わせて臨床的尤度,検査前確率を判定する。第一選択となるのが冠動脈CTである。冠動脈CTは,虚血の程度が客観的に評価できる血流予備量比コンピューター断層撮影(FFR-CT)を保険診療で使用できるので,同意が得られれば積極的に活用する。冠動脈CTが腎機能やアレルギー等の理由で行えない場合は,99mTc負荷心筋シンチグラフィなどで診断する。画像診断を組み合わせない運動負荷心電図は診断の特異度が低いために推奨されない。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    冠動脈CTで狭窄病変が見つかった場合は,薬物治療と生活指導を直ちに開始する。そして,症状とQOL・心機能改善のために,カテーテル(冠動脈造影)検査,血行再建術〔経皮的冠動脈インターベンション(PCI)や冠動脈バイパス手術(CABG)〕を行うかどうかを患者と相談する。カテーテル検査に関しては時間をかけて決めていってもよい。安定冠動脈疾患による胸痛は,INOCAと閉塞性冠動脈疾患の両方を念頭に置いて適切に診断し,虚血が証明された血行再建が必要な病変に対し血行再建術を行うことが求められる。血行再建術を行った後も,薬物療法と生活習慣の改善を継続することが重要である。

    残り1,305文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

    • 1
    • 2
  • next
  • 関連記事・論文

    もっと見る

    関連書籍

    もっと見る

    関連求人情報

    公立小浜温泉病院

    勤務形態: 常勤
    募集科目: 消化器内科 2名、呼吸器内科・循環器内科・腎臓内科(泌尿器科)・消化器外科 各1名
    勤務地: 長崎県雲仙市

    公立小浜温泉病院は、国より移譲を受けて、雲仙市と南島原市で組織する雲仙・南島原保健組合(一部事務組合)が開設する公設民営病院です。
    現在、指定管理者制度により医療法人社団 苑田会様へ病院の管理運営を行っていただいております。
    2020年3月に新築移転し、2021年4月に病院名を公立新小浜病院から「公立小浜温泉病院」に変更しました。
    6階建で波穏やかな橘湾の眺望を望むデイルームを配置し、夕日が橘湾に沈む様子はすばらしいロケーションとなっております。

    当病院は島原半島の二次救急医療中核病院として地域医療を支える充実した病院を目指し、BCR等手術室の整備を行いました。医療から介護までの医療設備等環境は整いました。
    2022年4月1日より脳神経外科及び一般外科医の先生に常勤医師として勤務していただくことになりました。消化器内科医、呼吸器内科医、循環器内科医及び外科部門で消化器外科医、整形外科医の先生に常勤医師として勤務していただき地域に信頼される病院を目指し歩んでいただける先生をお待ちしております。
    又、地域から強い要望がありました透析業務を2020年4月から開始いたしました。透析数25床の能力を有しています。15床から開始いたしましたが、近隣から増床の要望がありお応えしたいと考えますが、そのためには腎臓内科(泌尿器科)医の先生の勤務が必要不可欠です。お待ちいたしております。

    ●人口(島原半島二次医療圏の雲仙市、南島原市、島原市):126,764人(令和2年国勢調査)
    今後はさらに、少子高齢化に対応した訪問看護、訪問介護、訪問診療体制が求められています。又、地域の特色を生かした温泉療法(古くから湯治場として有名で、泉質は塩泉で温泉熱量は日本一)を取り入れてリハビリ療法を充実させた病院を構築していきたいと考えています。

    もっと見る

    関連物件情報

    もっと見る

    page top