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急性心不全[私の治療]

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  • 【治療上の一般的注意】

    低心機能症例では,うっ血に対する安易な利尿により,循環血漿量の低下が惹起され,臓器低灌流をきたすことがある。自覚症状やバイタルサイン,血液検査や心エコー等による,慎重なモニタリングが必要である。

    ▶治療の実際

    【うっ血の軽減を目的とした治療】

    利尿薬投与までの時間(time to diuretics)と予後との関連が示されており,うっ血の解除は早いほどよい。近年わが国では,ループ利尿薬の効果が不十分である症例に,トルバプタンを使用できるようになった。反応が乏しい場合には,腎代替療法も考慮する。

    一手目 ラシックス注(フロセミド)1回20~40mg(静注)反応が乏しい場合には,用量を倍加(最大投与量まで)

    二手目 〈処方変更〉サムタス注(トルバプタンリン酸エステルナトリウム)1回16mg(点滴静注)

    〈vascular failure症例の場合〉

    vascular failure症例では,後負荷軽減を目的として,以下を考慮してもよい。なお,重篤な低血圧,心原性ショック,脱水,急性右室梗塞例には投与すべきでない。

    一手目 ニトロール注(硝酸イソソルビド)2〜4mg/時(持続静注)適宜増減

    二手目 〈一手目に追加〉ハンプ注(カルペリチド)0.0125〜0.025μg/kg/分(持続静注)適宜増減

    【低心拍出の解除を目的とした薬物治療】

    うっ血を認めない患者では,体液量の補正を行い,強心薬の使用を考慮する。心原性ショックや組織低灌流症例では,強心薬に加えて機械的補助循環を適宜考慮する。

    一手目 ドブトレックス注(ドブタミン塩酸塩)1〜3μg/ kg/分(持続静注)適宜増減

    二手目 〈一手目に追加〉ミルリーラ注(ミルリノン)0.05〜0.25μg/kg/分(持続静注)適宜増減,またはコアテック注(オルプリノン塩酸塩水和物)0.1〜0.3μg/kg/分(持続静注)適宜増減

    三手目 〈追加または処方変更〉イノバン注(ドパミン塩酸塩)1〜3μg/kg/分(持続静注)適宜増減

    【心拍数の適正化を目的とした薬物治療】

    頻脈性心房細動の心拍数コントロールには,ランジオロールもしくはジゴキシンを用いる。心機能低下を有する場合には,アミオダロンも考慮される。非ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬の投与を行うべきではない。

    一手目 オノアクト注(ランジオロール塩酸塩)1〜5μg/ kg/分(持続静注)適宜増減

    二手目 〈一手目に追加または処方変更〉急速飽和療法:ジゴシン注(ジゴキシン)1回0.25〜0.5mg(静注)

    ▶専門家へのコンサルト

    原則として,急性心不全は循環器専門医が治療担当すべき病態であり,速やかなコンサルトを要する。息切れなどの自覚症状,体重の推移や浮腫を含めた身体所見,血圧・脈拍といったバイタルサインなどの経時的な推移・モニタリングが重要である。

    ▶患者への説明のポイント

    急性心不全は,治療経過中に再増悪をきたしたり,致死性不整脈を生じるケースもあり,生命予後に関わる重篤な病態であることを説明する。また,回復退院後も再増悪による入院を繰り返しうるため,生涯にわたる増悪予防が重要となる。

    【参考資料】

    ▶日本循環器学会, 他:急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版).
    https://www.j-circ.or.jp/guideline/guideline-series/

    ▶日本循環器学会, 他:2021年JCS/JHFSガイドライン フォーカスアップデート版 急性・慢性心不全診療.
    https://www.j-circ.or.jp/guideline/guideline-series/

    ▶日本心不全学会:血中BNPやNT-proBNPを用いた心不全診療に関するステートメント2023年改訂版.
    https://www.asas.or.jp/jhfs/topics/bnp20231017.html

    奥村貴裕(名古屋大学医学部附属病院重症心不全治療センター/循環器内科病院講師)

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