治療抵抗性の心房細動(AF)に対するカテーテルアブレーションは、周術期成績は改善されてきた一方、遠隔期AF再発が問題として残っている。しかしこの再発をAFリスク因子の積極的管理だけで相対的に40%以上抑えられることが、小規模ながらランダム化比較試験(RCT)で証明された。11月16日から米国シカゴで開催された米国心臓協会(AHA)の学術集会において、Rajeev K. Pathak氏(アデレード大学、豪州)がARREST-AF試験の結果として報告した。これまでも心血管系(CV)リスク管理によるアブレーション後AF再発抑制を示唆する観察研究(ARREST-AF cohortなど)は報告されていたが、RCTによる検討は初めてだという。
ARREST-AF試験の対象は、発作性/持続性の症候性AFに初回アブレーションを施行した、豪州在住の「肥満」と「CVリスク因子」(後述)を認めた122例である。「肥満」の基準は「BMI≧27kg/m2」かつ「腹囲径、男性:≧100cm、女性≧90cm」とされた。
平均年齢は約60歳、女性はおよそ2割のみ、平均BMIは33kg/m2だった。またAFは59%が「持続性」だった。「CVリスク因子」最多は「高血圧」の73%、次いで「睡眠時無呼吸」(40%)、「喫煙」(39%)、「過度のアルコール摂取」(35%)、「糖尿病」(14%)の順となっていた。
これら122例はCVリスク因子に積極介入する「CV積極介入」群(62例)と「通常治療」群(60例)にランダム化され、盲検化されることなく観察された。「CV積極介入」群では上記5つのCVリスク因子に加え、「肥満」と「身体活動性」「血清脂質」にも積極介入した(合計8因子)。両群とも観察はクリニック(複数)で実施し、フォローアップ受診は3カ月おきとした。
1次評価項目は「抗不整脈薬非服用下のAF再発」である。AF検出には7日間Holter心電計を用いた。
・リスク因子管理状況
平均12.3カ月観察後、「体重」と「収縮期血圧」は「CV積極介入」群でのみ、試験開始前に比べ有意な低下を認めた。減量幅は9kg、血圧低下幅は13mmHg(138→125mmHg)である。一方、血糖値と血清脂質は両群とも、試験開始後の有意な改善はなかった。
・AF再発
一次評価項目である、抗不整脈薬非服用下AF「非」再発率は、「CV積極介入」群(61%)で「通常治療」群(40%)に比べ有意に高かった。「CV積極介入」群における再発ハザード比は0.53(95%CI:0.32-0.89)である。両群のカプランマイヤー曲線が乖離を始めたのは、試験開始後90日を経過後からだった(それ以前はまったく差なし)。
・AF症状
AF重症度スコア(AFSS)を用いて評価したAFの「頻度」と「持続時間」は「CV積極介入」群でのみ、試験開始後の有意低下を認めた。一方、「AF症状重症度」は両群とも有意に改善し、群間差はなかった。
指定討論者のRatika Parkash氏(ダルハウジー大学、カナダ)は、本研究は症例数が少ないため、「CV積極介入」による作用を過大評価している可能性も否定できないとし、より大規模なRCTでの確認が必要だと指摘した。
本試験はアデレード大学とロイヤル・アデレード病院から資金提供を受けた(ANZCTRによる。学会報告では開示なし)。