株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

Lancet、医事新報での疑義「意味が分からなかった」 [ディオバン事件公判で白橋被告]

No.4813 (2016年07月23日発行) P.10

登録日: 2016-07-23

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

ノバルティスファーマ社の降圧剤バルサルタン(商品名ディオバン)の論文データを改竄したとして薬事法違反(虚偽広告)の罪に問われた同社の元社員、白橋伸雄被告に対する公判が終盤を迎えている。
14日の被告人質問では検察側が、ディオバンの臨床試験(用語解説)においてディオバン群と対照群の降圧値の平均値と標準偏差が一致する統計的異質性を由井芳樹医師がLancet誌と日本医事新報で指摘したことについて、「何が問題だと理解したか」と質問。白橋被告は「騒ぎが起こったことが問題だと思った」と回答した。検察側が「血圧値の何が問題か」と重ねて質問したところ、当時、Kyoto Heart Study(KHS)の研究者から、血圧値の統計的異質性の意味について相談があったため、日本医事新報の該当論文のPDFを添付したメールを研究者に送信し、「『よく意味が分からなかった』と答えた」と述べた。
また、厚生労働省の「高血圧症治療薬の臨床研究事案に関する検討委員会」とKHSを実施した京都府立医大が不正の疑義を調査した際、臨床試験の症例入力データを外部のデータセンターから自身に直接送付されたことはないと答えたにもかかわらず、実際には60回以上送付されていたことを問うと「(送付はないと言ったのは)勘違いだった」と釈明した。
一方、弁護側は医師と製薬企業社員の関係性について質問。白橋被告は、医師とMRの関係は対等ではなく「ドクターは顧客であり、上」と証言。雑用を依頼されることも多く、被告とKHS研究者との関係も「対等ではなく、(関係性は)MRとそれほど変わらなかった」と証言した。
公判ではKHS研究者の証人尋問を終えているが、その後の被告人質問での証言と食い違いがあることから、裁判所の判断により再度、KHS筆頭著者の証人尋問が行われることとなった。結審は秋ごろの見通し。


●用語解説
【ディオバンの臨床試験】
ノバルティスファーマ社の降圧剤ディオバンを用いた日本の臨床試験はJikei Heart Study(JHS)、Kyoto Heart Study(KHS)、SMART、VART、Nagoya Heart Studyの5試験ある。由井芳樹医師(京大、当時)が2012年、Lancet(Yui Y: Lancet. 2012;379(9824):e48.)と本誌(由井芳樹:医事新報. 2012;4595:26-31.)でJHS、KHS、VARTの血圧値に関する疑義を指摘した。

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

関連物件情報

もっと見る

page top