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代理出産 - 子供の福祉を最優先に [お茶の水だより]

No.4712 (2014年08月16日発行) P.13

登録日: 2014-08-16

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▼代理出産をめぐるニュースが国内外で大きな議論を呼んでいる。オーストラリア人夫婦が代理出産でもうけた双子の子供のうち、ダウン症の男児の引き取りを拒否したのだという。
▼代理出産が内在するリスクは、今回のような悲劇だけではない。妊娠・出産に伴う身体的・精神的負担を第三者に課すこと、子供への長期的影響が不明なこと、懐胎者の医療行為を巡り懐胎者と依頼者の希望が一致しない可能性があること、懐胎者の自己決定に周囲の強制や誘導が生じる懸念があること─など多岐にわたる。日本では代理出産について日本産科婦人科学会が自主的に禁止しているだけで、法整備はなされていない。海外の代理出産を斡旋する国内業者が複数あるとみられるが、その実態は明らかになっていない。
▼代理出産が日本で高い関心を集めたことは今回が初めてではない。2001年に日本初の代理出産が公表され、06年には、米国人が代理出産した子供との親子関係の承認を求めて日本人夫妻が訴訟を提起。最高裁は、嫡出親子関係を認めない決定を下した。08年には、インドで代理出産により生まれた日本人男性の子供に旅券が発券されず、出国できない事例も発生した。そうした社会の関心に呼応して、法整備に向けた動きもあった。03年、厚生科学審議会が代理出産を禁止する報告書をまとめ、08年には日本学術会議が代理出産を禁止する一方で、国内外に代理出産の科学的データが少ないことから厳重な管理の下に試行(臨床試験)を行い、再度検討する方向性を示した。しかし、いずれも法制化にはつながっていない。
▼医療は通常、患者本人や家族の同意を得た上で行われるが、代理出産を含む生殖補助医療は、生まれてくる子供の同意を得ずに行われる。だからこそ、実施するのであれば、あらゆる事態を想定して子供に不都合が生じないような体制が整備されなければならない。
▼自民党のプロジェクトチームは今年4月、子宮がないなど適応を限定した上で代理出産を認める法案をまとめ、秋の臨時国会への提出を目指している。今後も立法府が、この問題に無関心であり続けるのであれば、オーストラリアの悲劇が日本でも起きる可能性を放置することになる。生まれてくる子供の福祉を最優先にした法整備を図るために、国会で早期に議論を始める必要がある。

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