▼大阪大学の免疫学フロンティア研究センター(IFReC)と中外製薬が総額100億円の「包括連携契約」を締結した。中外製薬は、審良静男氏を拠点長とし免疫領域で世界的評価が高いIFreCに、年間10億円を10年間拠出。未発表の研究成果について共同研究の第一選択権を得る。
▼これまでの産学連携は個別研究テーマへの寄付や共同研究が主流。今回IFreCは組織単位で基礎研究段階から資金提供を受け、阪大の西尾章治郎総長は「新しい産学連携の形だ」と強調する。IF
ReCとバイオ・抗体医薬品分野が得意な中外製薬との連携により基礎研究と臨床応用研究の壁が取り払われ、実用化の加速に期待がかかる。阪大と中外製薬には、岸本忠三元阪大総長が発見した「IL-6」から生まれた関節リウマチ治療薬「アクテムラ」という成功例がある。両者は常時5~10件の共同研究を進め、がんや自己免疫疾患などでアクテムラ級の成果を「複数出せれば」としている。
▼IFReCは文部科学省の「世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)」に採択され2007年に発足。制御性T細胞の発見者、坂口志文氏などノーベル賞候補とされる研究者が複数在籍するが、WPIによる資金提供は今年度で終了することが決まっているため、今回の連携の意義は大きい。
▼国家戦略特区と関西イノベーション国際戦略総合特区に指定されている関西地区では、産学連携が盛んだ。京大iPS細胞研究所と武田薬品工業は昨年、iPS細胞の臨床応用に向けた共同研究を開始した。また、医薬品医療機器総合機構(PMDA)関西支部では6月からテレビ会議を通じた薬事相談が可能になるなど、環境整備が進む。関西発の産学連携による画期的新薬の登場に期待したい。