株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

前立腺癌の生化学的再発に対する救済放射線療法と救済内分泌療法

No.4749 (2015年05月02日発行) P.60

横溝 晃 (九州大学大学院医学研究院泌尿器科学分野准教授)

登録日: 2015-05-02

最終更新日: 2016-10-18

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

【Q】

限局性前立腺癌に対する根治的前立腺摘除術や放射線療法後の前立腺特異抗原(prostate-specific antigen:PSA)のみ再発患者に対する治療方針として,救済放射線療法と救済内分泌療法がありますが,それぞれの治療法の開始時期や適切な患者群は明らかになっているのでしょうか。九州大学大学院・横溝 晃先生のご回答をお願いします。
【質問者】
筧 善行:香川大学医学部泌尿器科教授

【A】

根治的前立腺摘除術(radical prostatectomy:RP)後の再発は,まずPSAの上昇〔P SA再発,生化学的再発(biochemical recurrence:BCR)〕で発見されます。BCRの定義として,「前立腺癌取扱い規約 第4版」と「欧州泌尿器科学会(EAU)ガイドライン2014」ではともに0.2ng/mLを超えて2回連続上昇することとしています。この時点のCT,骨シンチグラフィーなどの画像検査で転移,再発部位が同定されることはまずありません。
一般に局所再発であれば救済放射線療法(salvage radiation therapy:SRT),遠隔転移があれば救済内分泌療法(salvage hormone therapy:SHT)が標準的治療になると思われますが,実際には再発部位の同定が困難なため,標準的治療法は確立していないのが現状です。そして,救済治療の開始は,PSAが一貫して上昇する傾向や,その後の転移出現の相関解析から,この定義(PSA 0.2ng/mL超)の時点ではなく,0.4ng/mLとする意見が多いようです。
Stephensonら(文献1)は,BCRをきたした1540例にSRTを施行した結果を報告し,6年の無進行生存率(progression─free survival:PFS)は32%であったものの,PSA 0.5ng/mL以下で治療を開始した症例に限れば48%と改善し,特にPSA doubling time(PSADT)10カ月以下またはGleason score 8~10という前立腺癌死の可能性が高い群においても,PSA 0.5ng/mL以下で治療を開始すれば,6年PFSは41%と比較的良好なことから,PSA 0.5
ng/mL以下の段階でのSRT開始を推奨しています。そのため,SRTを開始するタイミングはPSA 0.4~0.5ng/mLの範囲内が最善ということになります。
SHTについては,欧米では根治療法と考えられていない背景もあり,前向きのエビデンスレベルの高い研究結果は報告されていません。この問題を解決するため,JCOG0401試験として,SRT群とビカルタミドによるSHTとのランダム化比較試験が行われ,2016年5月に最終結果が明らかとなる予定です。
現状では,明確な遠隔転移のパターン(例:PSA倍加時間6カ月以下,かつ術後1年以内の再発,かつ断端陰性,かつGleason score 9,10など)でなければ,SRTの有害事象は比較的軽度なことより,まずSRTを行い,PSA値の変動も含めた経過観察を行い,無効例に対してSHTを行うことが,実臨床に即した治療方針と私は考えています。

【文献】


1) Stephenson AJ, et al:J Clin Oncol. 2007;25: 2035-41.

関連記事・論文

関連書籍

関連求人情報

公立小浜温泉病院

勤務形態: 常勤
募集科目: 消化器内科 2名、呼吸器内科・循環器内科・腎臓内科(泌尿器科)・消化器外科 各1名
勤務地: 長崎県雲仙市

公立小浜温泉病院は、国より移譲を受けて、雲仙市と南島原市で組織する雲仙・南島原保健組合(一部事務組合)が開設する公設民営病院です。
現在、指定管理者制度により医療法人社団 苑田会様へ病院の管理運営を行っていただいております。
2020年3月に新築移転し、2021年4月に病院名を公立新小浜病院から「公立小浜温泉病院」に変更しました。
6階建で波穏やかな橘湾の眺望を望むデイルームを配置し、夕日が橘湾に沈む様子はすばらしいロケーションとなっております。

当病院は島原半島の二次救急医療中核病院として地域医療を支える充実した病院を目指し、BCR等手術室の整備を行いました。医療から介護までの医療設備等環境は整いました。
2022年4月1日より脳神経外科及び一般外科医の先生に常勤医師として勤務していただくことになりました。消化器内科医、呼吸器内科医、循環器内科医及び外科部門で消化器外科医、整形外科医の先生に常勤医師として勤務していただき地域に信頼される病院を目指し歩んでいただける先生をお待ちしております。
又、地域から強い要望がありました透析業務を2020年4月から開始いたしました。透析数25床の能力を有しています。15床から開始いたしましたが、近隣から増床の要望がありお応えしたいと考えますが、そのためには腎臓内科(泌尿器科)医の先生の勤務が必要不可欠です。お待ちいたしております。

●人口(島原半島二次医療圏の雲仙市、南島原市、島原市):126,764人(令和2年国勢調査)
今後はさらに、少子高齢化に対応した訪問看護、訪問介護、訪問診療体制が求められています。又、地域の特色を生かした温泉療法(古くから湯治場として有名で、泉質は塩泉で温泉熱量は日本一)を取り入れてリハビリ療法を充実させた病院を構築していきたいと考えています。

もっと見る

関連物件情報

もっと見る

page top