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小児心臓外科領域における内視鏡下手術

No.4767 (2015年09月05日発行) P.59

宮地 鑑 (北里大学医学部心臓血管外科学主任教授)

登録日: 2015-09-05

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

胸壁への侵襲を最小限にできる内視鏡下手術は,成長段階にある小児にとって,成人以上のメリットがあると思います。一方で,安全性に関して危惧する心臓外科医も多く,実際に行っている施設は限られています。以下について,北里大学・宮地 鑑先生のご教示をお願いします。
(1) 動脈管開存症に対する動脈管閉鎖術は,人工心肺を使用しないシンプルな術式で,内視鏡下手術に適していると思いますが,術式の安全性を確保するためにどのような工夫をされていますか。手術適応の限界も含めて。
(2) 今後,小児心臓外科領域において,どのような術式に内視鏡下手術手技を応用できるとお考えですか。
【質問者】
大塚俊哉:東京都立多摩総合医療センター 心臓血管外科部長

【A】

(1)安全性の確保
内視鏡下(胸腔鏡下)動脈管閉鎖術は2014年4月より保険収載された新しい手術術式です。現在,保険適用上,施行可能な施設は北里大学病院と群馬県立小児医療センターの2箇所のみと思われます。これは,施設基準を満たすためのハードルが高く設定されているからです(小児心臓手術を50例/年以上行っている施設で,開胸による動脈管手術術者経験が20例以上あり,かつ胸腔鏡下動脈管閉鎖術の術者もしくは助手の経験が10例以上,うち5例は術者経験を有する心臓外科医が1名以上いること)。つまり,ある程度以上の内視鏡下手術手技を有する術者しか行えないことであり,ある意味,安全を担保していることになっています。
内視鏡下手術では良好な手術視野とワーキングスペースを確保することが安全上きわめて重要ですので,私たちの施設では,呼吸器外科手術と同様に,右肺分離換気下で左肺を虚脱させて行っています。
術中経食道心臓超音波検査による動脈管閉鎖の確認とともに,小児・乳幼児の分離換気麻酔はきわめて高い技術を要するため,十分に修練を積んだ麻酔科医も必要となります。石灰化を伴う症例や高齢者の動脈管開存症は適応外とされていますが,それ以外の症例で,未熟児・低出生体重児を含む新生児から乳幼児・学童まで,カテーテル治療の適応外とされた症例はすべて適応であると考えています。
(2)今後の内視鏡下手術
今後の小児心臓外科領域での内視鏡下手術は,おそらく現在,カテーテル治療で用いられている欠損孔閉鎖デバイスを鏡視下に心臓表面(右房・右室)から直接穿刺して,より安全・確実に留置する方向に向かうと思われます。ドイツや中国では既に心房中隔欠損や心室中隔欠損でかなり多く行われ,良好な成績が報告されています。

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