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前立腺癌の治療法の選び方─手術との比較,放射線治療法の選択

 【治療法の適応を決めるには,グリソンスコアとPSA値を参考にする】

No.4792 (2016年02月27日発行) P.58

芝本雄太 (名古屋市立大学大学院医学研究科 放射線医学分野教授)

登録日: 2016-02-27

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

前立腺癌の根治的治療法として手術と放射線治療がありますが,治療法の選択はどのように考えればよいでしょうか。また放射線治療にもX線外部照射,定位放射線治療,粒子線治療,小線源治療などがありますが,様々な状況においてそれぞれの照射法をどのように選んだらよいでしょうか。名古屋市立大学・芝本雄太先生のご教示をお願いします。
【質問者】
大西 洋:山梨大学医学部放射線医学講座教授

【A】

転移のない限局性前立腺癌の根治的治療法は,前立腺全摘術か放射線治療です。中・高リスク群ではこれらに加えてホルモン療法の併用が勧められます。放射線治療では,従来の外部放射線照射法はもはや勧められず,強度変調放射線治療(intensity-modulated radiation therapy:IMRT),小線源治療,粒子線治療が3本柱になります。
それぞれの治療法の適応を決めるには,T因子が重要で,グリソンスコアとPSA値を参考にします。被膜浸潤のあるT3a期以上では,手術と小線源治療は良い適応ではありません。小線源治療はT2以下で低リスク群が好適応です。IMRTと粒子線治療はいずれのステージでも対応可能です。T2以下の限局性前立腺癌では,治療法の決定は患者にゆだねられるべきです。それぞれの治療法に長所と短所がありますので,患者は自分でよく調べるとともに,各治療の専門家を受診して,自身が希望する治療法を決めるべきです。ほぼ全患者がまず泌尿器科を受診して,そこで診断が下されますが,その後泌尿器科医は,治療法として手術以外に放射線治療があることは必ず伝えなければなりません。伝えた上で希望する患者には放射線科を受診させて下さい。伝えない医師をときどき見かけますが,そのような人は医師失格と言えるかもしれません。放射線治療のことを告げずに手術を行って,もし後に告げなかったことで患者側に訴えられた場合は,泌尿器科医は敗訴することでしょう。
各治療法の長所・短所を詳しく述べるにはスペース不足ですので,3つの放射線治療について簡単に特徴を述べます。小線源治療は短期間に治療が終わることが特長です。IMRTは通常の方法では2カ月近くかかりますが,低侵襲の治療です。なお近年はIMRTの代わりに定位照射によって,ずっと短期間で照射する方法も試みられています。粒子線治療は保険適用ではなく高額の費用が必要ですが,医療保険の先進医療特約でカバーされる場合は問題ありません。ただし,将来も先進医療が続くかどうかは不透明です。粒子線の通常の照射法(左右対向二門など)では,線量分布においてIMRTと大きく変わらない可能性がありますが,最新のスキャニング照射技術を用いれば,IMRTより線量分布は良くなり,有害事象の軽減や効果の向上の可能性があります。
前立腺癌は上記の種々の方法で根治が期待できるがんです。治療法は患者に選択して頂くことが肝要です。ちなみに,私がもし前立腺癌になった場合は,手術を選択することはありません。放射線治療の中から選びますが,小線源よりはIMRT(または定位照射)か粒子線を選択すると思います。

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