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予約制と応招義務

No.4702 (2014年06月07日発行) P.70

竹中郁夫 (弁護士)

登録日: 2014-06-07

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

最近,医院や総合病院,大学病院などの医療機関で「完全予約制」など予約制を謳う所が増えている。これは医師の応招義務に抵触すると思われるがどうか。 (静岡県 N)

【A】

医師法第19条1項は「診療に従事する医師は,診察治療の求があつた場合には,正当な事由がなければ,これを拒んではならない」と定めている。
この規定は,医師法第17条が「医師でなければ,医業をなしてはならない」と定め,医療行為の医師独占主義を採っていることから,患者がみだりに医療提供を拒まれることで健康や生命に危険が生じることを防ぐべく,法が手当てしているものと考えられる。
ところで,前述の医師法第19条1項の文言では「……正当な事由がなければ,これを拒んではならない」とあり,あくまで「正当事由」の有無によって,応招義務違反かそうでないかにわかれるということになっている。
たとえば,専門外の医師が,特に緊急の事態でもないのに,患者が求めるからといって自らも適切な医療的介入と思わない診療行為を無理に行うことによって医療事故を発生させるようなことがあれば,かえって患者の健康や生命が危険にさらされることにもなる。そのようなことを防ぐ意味でも,漫然と専門外の治療を引き受けることなく,専門医の受診を勧めることが適切と考えられる場合も少なくないであろう。
このように,正当事由の判断については,個別具体的な多様な要素がからんでくるので,TPOを考慮せずにその有無の判断を下すことは難しい。医師と患者間で判断が異なり法的紛争となれば,その判断は司法に委ねられることになろうが,予約制と応招義務については以下のように解することができよう。
緊急性のない受診については,予約制を取っており,予約を入れて受診するように応答すること自体は即応招義務に反することはないであろう。ただ,緊急に救急救命処置が必要な患者が目前に到来しているような状態ならば,救急車による他医療機関搬送まで救急救命処置などを行うことは必要とされるであろう(昭和49年4月16日付医発第412号厚生省医務局長回答は,休日夜間診療所等で急患診療が確保されている地域で,休日診療所等の受診の指示は可であるも,応急の対応必要時は別との同旨の回答をしている)。

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