【Q】
死亡診断書(死体検案書)を作成するときに,空欄の部分を斜線(と印鑑)で消すことがあるが,これについて明文化された決まりはあるのか。
また,「以下余白」などという文言も必要となることがあるか(その趣旨としては,余分な情報を書き込まれないようにしておく,という理解でよいか)。 (兵庫県 K)
【A】
医師法施行規則第20条1項は,「医師は,その交付する死亡診断書又は死体検案書に,次に掲げる事項を記載し,記名押印又は署名しなければならない。
一 死亡者の氏名,生年月日及び性別
~中略~
十三 当該文書を作成した医師の所属する病院等の名称及び所在地又は医師の住所並びに医師である旨」と定め,同条2項は,「前項の規定による記載は,第四号書式によらなければならない」と定めている。
したがって,記入内容や用紙は定められているが,特に記入要領の委細は定められてはおらず,第四号書式に死亡診断書(死体検案書)と印刷されている届出用紙には,記入枠の外に一定の記入要領が不動文字でガイドすべく置かれている。
また,例年厚生労働省の「死亡診断書(死体検案書)記入マニュアル」が発行されており〔ちなみに平成26(2014)年度版は,http://www.mhlw.go.jp /toukei/manual/dl/manual_h26.pdf〕,行政解釈として医師においてはこのように記入あられたしというところは明らかにされていること,またそれでも疑義のある記載がみられた場合は戸籍法の管轄官庁である法務局から死亡届・死亡診断書の提出先である各地方自治体担当窓口を通して記載医師に照会がなされ,全国的統一が図られていること,このような事務についての教育・研究を担当する大学の法医学教室からマニュアルが発行されていたり〔関西医科大学法医学教室 編「法医学実習 死亡診断書(死体検案書)記載マニュアル」(http://www3.kmu.ac.jp/legalmed/dead/sindansyo.pdf)〕,総合的にみれば,通常の公的文書と同じように慣例的なルールにのっとっているようにみえるが,一義的なルールがあるとまでは言えないようである。
空欄についても,厚生労働省のマニュアルで空欄のままの表記をモデルにしている部分を,前述の法医学教室のマニュアルは斜線で多く閉じているような差異はみられ,両マニュアルとも,「以下余白」の記載例はみられないが,より改ざんなどの危険を少なくする意味で,余事記載でなく有益な記載と考えられ,裁量として許されるものと考えられる。