【Q】
心電図における通常型(common type)と非通常型(uncommon type)の違いについて。
これらは,時計回りと反時計回りになる場合がある。両者を合わせてcommon typeと言うのか,あるいは異なるのか。反時計回りの場合,心電図には急峻な部分と緩慢な部分ができるのはなぜか。 (高知県 F)
【A】
心房粗動の分類は,心臓電気生理学的検査に基づいたWellsの分類(文献1)が有名であるが,カテーテルアブレーション治療の進歩に伴い,新たな分類が一般的となった。そのため,言葉の使い方で若干の混乱が生じている。
Wellsの分類では,通常型(common type)と非通常型(uncommon type)は,ともにⅠ型の心房粗動に分類されている。この2つのタイプの違いは,三尖弁輪を反時計方向に旋回(common type)するか,時計方向に旋回(uncommon type)するか,ということにある。Ⅱ型はそれ以外の心房粗動で,Ⅰ型と比較して粗動波が速く,ペーシングの影響を受けにくいという特徴がある。
ここ最近の分類では,三尖弁輪を旋回するかしないかということで分類されている。反時計回りであろうと,時計回りであろうと三尖弁輪を旋回する心房粗動を通常型(common type),三尖弁輪以外を旋回する心房粗動を非通常型(uncommon type)と総称することが多くなってきている。つまり,Wellsの分類と最近の分類のcommonでは,同じcommonという名称であっても意味が違うことが混乱の原因である。
そこで,心臓電気生理学的検査の進歩により,多くの症例で心房粗動の回路が診断できるようになったことから,反時計回りの通常型心房粗動や,僧房弁輪を旋回する非通常型心房粗動,のように,回路の名前や旋回方向を心房粗動の前につけることが一般的となっている。
反時計回りの通常型心房粗動で認められる下壁誘導の鋸歯状波は,緩慢に下降し,急峻に上行する部分から成り立つ。心内心電図では,粗動波の緩徐な下降脚は下位右房から右房中隔への伝導に相応し,上行脚は右房自由壁から下大静脈三尖弁輪間の峡部に向かう伝導に相応する。
粗動波が対称形ではなく非対称となる理由としては,右房のリエントリー回路から左房への興奮伝播様式が関連していると考えられている。また,心房粗動は粗動波が持続し,心電図上等電位線を欠くので,洞調律時にP波の起始点を結んだ直線のようなはっきりとした基線はない。下に凸か,上に凸かの判断が難しい粗動波の症例では,粗動波の中でなるべく平坦な部分を基準として判断がされている。
1) Wells JL Jr, et al:Circulation. 1979;60(3):66573.