株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

突発的な血圧上昇がみられる高血圧症の病態と対応

No.4757 (2015年06月27日発行) P.62

冨山博史 (東京医科大学循環器内科教授)

登録日: 2015-06-27

最終更新日: 2016-10-18

【Q】

普段は血圧コントロールが良いにもかかわらず,年に1~2回,特別な原因・誘因なく170/100 mmHgと高くなり,これが2~3日間続く患者をみることがあります。アダラートカプセルなどを短期使用すると普段の血圧に戻ります。突然血圧が上がる病態のメカニズムと対応をご教示下さい。 (東京都 F)

【A】

当初,血圧変動は24時間血圧測定にて評価され,変動異常(夜間血圧低下なし,夜間血圧上昇,夜間血圧過度低下など)(日内変動)を有する症例では心血管疾患発症リスクが高いことが知られていました。その後,血圧変動評価の時間的概念は拡大され,家庭血圧の測定日ごとの変動の大きい症例(日間変動)や,受診ごとに測定される診察室血圧の変動の大きい症例(月・季節間変動)も予後が不良であることが知られるようになりました。
ご質問の症例は,この月・季節間の血圧変動異常に該当する症例と考えます。血圧変動異常をまねく病態として,加齢,糖代謝異常,睡眠時無呼吸症候群,パーキンソン病などの自律神経障害,心不全,陳旧性脳梗塞,慢性腎不全,また,そのほかの因子として,服薬アドヒアランス,飲酒,早朝の喫煙,精神的・身体的ストレス,室温変化,などが挙げられます。ご質問の症例は,これらの因子が影響し,変動異常が一時的に増悪したと推察されます。さらに,最近は動脈硬化性血管障害の進展に伴い,動脈の伸展性が低下し,頸動脈での圧受容器反射感受性の低下などを介して循環調節不全が生じ,血圧変動が大きくなることが報告されています。
加齢,糖代謝異常,陳旧性脳梗塞,慢性腎不全で血圧変動異常をきたす一因には,こうした病態が一部関与すると考えられています。陳旧性脳梗塞では循環調節に関連した自律神経調節障害を合併することもあり,パーキンソン病などの自律神経障害,心不全や睡眠時無呼吸症候群での低酸素に伴う交感神経活動亢進は直接血圧変動異常に関与します。また,腎機能障害症例では昼間の水・Na排泄不全の代償に夜間血圧が上昇します。
対応としては,変動増悪因子の軽減,変動異常をきたす潜在性疾患・病態の検索が必要です。さらに降圧薬処方・服薬の変更(就寝前服薬や1日2回の服薬など)を検討する際には,過度の血圧低下を避けるため,長時間作用型降圧薬が推奨されます。

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

もっと見る

関連求人情報

もっと見る

関連物件情報

もっと見る

page top