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血尿の尿蛋白測定結果には血球成分の蛋白量も含まれている?

No.4791 (2016年02月20日発行) P.61

堀尾 勝 (大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻 機能診断科学講座検査情報学研究室准教授)

登録日: 2016-02-20

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

(1)高度の肉眼的血尿時に,尿蛋白量を測定する際,血球成分の蛋白量も測定していることはないのでしょうか。あるとすれば,その影響を除外する方法を教えて下さい。
(2)脱水の指標としてFEUN(fractional excretion of urea nitrogen)が知られていますが,血液中および尿中のクレアチニン(Cr),尿素窒素(BUN)を測定する際,血液と尿の採取の時間的なずれはどの程度許容されますか。留置カテーテルを開放して得られた場合は,ほぼ同時と考えられますが,自然排尿や排尿バッグから採取した尿では,数分前から数時間前につくられた尿が混在しており,厳密には同時とは言いがたいと思います。
(北海道 F)

【A】

(1)尿蛋白測定時に血球成分の蛋白量が影響するのではないか
尿検体には赤血球,白血球,上皮細胞などの細胞成分や,細菌,析出した塩類などが含まれうると考えられます。尿蛋白濃度の測定時に細胞成分を多量に含む尿検体をそのまま用いると,検体の混濁だけでなく細胞由来の蛋白も影響すると思われます。日本臨床衛生検査技師会の尿蛋白測定標準化ワーキンググループは,尿蛋白測定の勧告法を2002年に報告しています(文献1)。そこでは,試料の前処理として,2000G以上で10分間遠心分離し,上清を用いることとしています。この遠心操作により,細胞成分や,析出した塩類は除去されます。なお,細菌などを除去するためにポアサイズ0.22μmのメンブランフィルターを用いて濾過したのち,測定を行うのが望ましいでしょう。
(2)FEUN計算時の血液と尿の採取の時間的なずれはどの程度許容されるのか
Crは,糸球体で濾過されたのちに尿細管で再吸収されることなく排泄されるのに対し,尿素は尿量に依存して再吸収され,脱水などの尿量減少時には排泄量が減少します。このため,FEUNは急性腎不全の原因が脱水などの腎前性か,尿細管壊死などの腎性かの鑑別に利用され,値が35%未満の場合は,腎前性を疑う根拠となっています。FEUNは血液のBUN,Cr濃度と尿のBUN,Cr濃度で算出されますが,血液のBUN,Cr濃度は数時間では変化しないとすると,自然排尿の蓄尿および排尿バッグからの尿によるFEUNは数分前から数時間前までのFEUNを平均したものと考えることができます。
健常人が多量に飲水した場合,1時間以内に尿量が増加することが予想され,FEUNは大きく変動しますが,脱水時など病態の把握が目的の場合,数時間前からのFEUNの平均値が得られても大きな問題とはなりません。輸液負荷など,体液量が変化する状態の場合は,その影響を含めて判断する必要はあります。

【文献】


1) 日本臨床衛生検査技師会尿蛋白測定標準化ワーキンググループ:日臨検標準会誌. 2002;17(1):3-18.

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