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せん妄・認知症のため抗結核薬 投与困難な肺結核患者への対応

No.4698 (2014年05月10日発行) P.62

大藤 貴 (国立病院機構山口宇部医療センター呼吸器内科)

登録日: 2014-05-10

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

高齢者の肺結核患者では,せん妄や認知症が重度で,内服はおろか点滴すらも施行困難に陥ることがあります。胃管も点滴と同様,しばしば自己抜去されてしまいます。結核病棟に入院している以上,治療を導入しなければならず,当院でも工夫はしていますが,山口宇部医療センター・大藤 貴先生はどのように治療されていますか。また,せん妄や認知症が重度の肺結核患者を診療する際に気をつけるべき点を。
【質問者】
倉原 優:国立病院機構近畿中央胸部疾患センター内科

【A】

認知症を基礎疾患として持つ人,また高齢であることに加え,結核感染と,結核病棟に入院自体が,せん妄の悪化リスクとなります。
結核病棟に入院中は,夜間にしっかり睡眠をとって生活リズムを整えるため,クエチアピンなどのメジャートランキライザーをやむをえず使うことがあります。長期予後を考えると異論もあるかもしれませんが,結核制御が患者さんのため優先されます。せん妄が起こった場合のため,入院時に基礎疾患に糖尿病がないか(クエチアピンなどは高血糖を誘発することがある)チェックし,せん妄時に用いる薬剤を決定しておきます。
私のプラクティスとしては,糖尿病がない場合,クエチアピンを12.5mgから,嚥下できない患者さんには胃管から簡易懸濁法で投与します。糖尿病がある場合は,クロルプロマジンを12.5mgから投与します。夜間で経管投与ができない場合は,ハロペリドールを筋肉注射することがあります。
このようにメジャートランキライザーを投与するため,脱水状態がないか,CPKの上昇など悪性症候群が起こらないか,慎重にフォローします。リエゾンで精神科に併診してもらえる環境があれば,協力して行うのがよいと思います。
昼間の抗結核薬が最も重要になります。嚥下機能が保たれている(きちんと食事を摂取する)患者さんは,看護師の協力のもとに,確実に内服することが必要です。大切なことは,薬剤を最小限,かつ日勤帯に投与が終わるように工夫することです。私のプラクティスとしては,抗結核薬は昼食後に投与しています。また,肝機能異常があり,ウルソデオキシコール酸が必要な場合,1回300mgで投与しています。
嚥下機能が低下している場合,特に脳血管障害後の患者さんでは,経鼻胃管で薬剤を投与しています。この場合,自己抜去されない工夫をしています。具体的には,経鼻胃管を鼻から耳の上へ通して,後ろ頭に,輪ゴムなどで先端を折り畳んで置いています。これは高齢者は肩より高い位置に手が上げにくいことが多いためです。また,胃管チューブはたわまないようにテープで固定します。触ってグラグラ動いてしまうものは,どうしても抜去したくなるものです。

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